デキる人は、「アイドマ+利他の精神」
悪質なキャッチセールスのように、勧誘する目的をごまかしながら、勧誘場所へ連れこんだり、相手に考える暇を与えない状況で契約を強いたりすれば、相手が「騙された」「強引な勧誘だ」と思うのも当然である。
もし、前述したアイドマをまっとうなビジネスに生かそうとするなら「自己の利益」という魂を入れるだけではなく、他者の利益も考える必要がある。これについて、京セラ名誉会長の稲盛和夫氏は『生き方』のなかで、儲けたいという欲を我身だけに止めておかずに、取引先、地域、しいては、国、世界へと、公益となるよう広く反映させていく。その「利他の精神が、巡り巡って、我身に利をもたらし、利を大きく広げていく」と述べている。
稲盛氏はこの精神について、僧侶からの話を引用し、わかりやすく説明している。地獄にも、極楽にも、大きな釜があって、うどんがグツグツ煮えている。しかしそれを食べるには、1メートルもの箸を使わなければならない。地獄の人たちは、うどんを食べようと、我先に箸をいれるが、あまりの長さにその口に持っていけない。しかし極楽では、相手に食べさせる心持ちを持っているので、みんなが互いにうどんという「利」を得ることができる。
詐欺と一般のビジネスの違いは、まさにここにある。
詐欺や悪質商法では、嘘や表面的なテクニックだけで自分だけを利するという点だけでの付き合いをする。しかし、本来のビジネスでは、点だけではなく、利他の精神をもってつがなり合い、線でつきあっていく。
詐欺の先にあるのは崖だが、一般の仕事では、こうした付き合いの延長線上に、本当の信頼関係が成り立ち、大きなビジネスチャンスがやってくる。アイドマの法則はあくまでもツールで、それを使う人がどうした心持ちであるべきなのか。それがいつも問われているのだ。