地位のないことを気に病むな。実力を身につけよ

孔子は若いときから弟子をとって教育にあたっている。声望が高まるにつれて弟子の数もふえていったらしい。孔子塾は、一言でいえば、「君子」の養成機関であった。孔子はみずからが年老いるにつれてこれに力を入れ、若い人たちの教育に情熱を傾けていった。

「後生(こうせい)畏(おそ)るべし。焉(いずく)んぞ来(らい)者(しゃ)の今に如(し)かざるを知らんや」(子(し)罕(かん)篇)

若いということは、それだけで豊かな可能性を秘めている。これからの人たちが今の人々に劣っているとは、けっして言えないというのだ。若い世代に大きな期待をかけていたのである。

孔子がそういう若い弟子たちにいちばん望んだのは、「やる気を出せ」ということであった。そういう意味のことを『論語』のなかで繰り返し語っている。たとえばこうである。

「これを如何せん、これを如何せんと曰(い)わざる者は、吾(われ)これを如何ともする末(な)きのみ」(衛霊公(えいれいこう)篇)

どうしたらよいか、どうしたらよいかと苦しんでいる者でなかったら、私だってどうしてやることもできない、というのだ。

また、孔子はこうも語っている。

「位なきを患(うれ)えず、立つ所以(ゆえん)を患う。己を知るなきを患えず、知らるべきを為(な)さんことを求むるなり」(里仁(りじん)篇)

地位のないことを気に病む必要はない。それよりも、実力を身につけることが肝心だ。人に認めてもらえないことを気に病む必要はない。それよりも、認めてもらえるような仕事をすることが先決だ、というのである。

これらのアドバイスはいずれも孔子自身が心がけたことであるし、実践したことでもあった。だから弟子たちとしても素直に耳を傾けることができたのではないか。

※本連載は書籍『ビジネスに効く教養としての中国古典』(守屋洋 著)からの抜粋です。