立て板に水のトークは、ビジネスに必要ない。とはいえ、マジメに拝聴するだけでは先に進まない。相手がこちらに(意識的・無意識的に)求めていることを的確に察知し、シンプルに返答すること。相手の立場に立てば、心を溶かすことができる!

上司への報告・連絡・相談は、部下の日課。どんなトークをすれば上司とうまくやっていけるのだろうか。

2014年のビジネス書大賞書店賞に輝いた『99%の人がしていないたった1%の仕事のコツ』を著したデロイト トーマツ コンサルティングのシニアマネジャーの河野英太郎氏は「前置きの言葉」を重視する。連絡事項の本題を伝える前に、「実は、準備不足なのですが」とか「ちょっと整理をしきれていないのですが」などと雲行きの怪しさを正直に言ってしまうと、上司の反応はネガティブで厳しいものになりやすい。

それに対し、「順調にいっていると思います」と前置きして本題部分を伝えると、上司はおおむねポジティブな反応で、「じゃあ、この部分をもう少しブラッシュアップしよう」などと協力的な姿勢になることが多い。もちろん、即刻上司に伝えるべき緊急事態であれば別だが、なぜ「自信があるように振る舞う」ことが功を奏するのか。

「前置きの言葉を聞いた段階で、人は先入観を持ちます。これを心理学ではプライミング効果と呼ぶそうです。“効く”と聞かされて薬を飲んだ場合と、薬と知らないで飲んだ場合の患者さんの違いに関する実験はよく知られていますが、ビジネスでも最初に自信があると“暗示”をかければ、私の経験上も相手からポジティブな反応が返ってくることが多いです」(河野氏)

胸を張って「自信満々に語る」ことで追い風をつくる。逆に言えば、へたに言い訳めいた表現をすることで逆風をつくり出してしまい、無用な労力・時間を生むような愚かな行為は犯してはいけない、ということだろう。

同じく上司へ何か連絡・相談しようとしたとき上司がパソコンに向かって何か必死に作業していて、声をかけるのを躊躇する場面ではどうするか。