美術家
会田 誠さん

1965年、新潟県生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科修了。絵画、写真、立体、パフォーマンス、小説、漫画など様々な分野においてセンセーショナルな作品を発表し、国内外で活躍。著作に『カリコリせんとや生まれけむ』『天才でごめんなさい』『美しすぎる少女の乳房はなぜ大理石でできていないのか』など。2016年7月~8月、ミヅマアートギャラリー(東京・市谷)にて個展「はかないことを夢もうではないか、そうして、事物のうつくしい愚かしさについて思いめぐらそうではないか。」を開催。瀬戸内国際芸術祭2016では8月いっぱい男木島(香川県・高松市)に滞在。9月3日~11月30日、釜山ビエンナーレ(韓国・釜山)にも参加する。
 

六年くらい前まで、千葉県東金市に住んでいました。物件の下見に訪れた際に、たまたま出合ったのが「まるに」です。ここはイワシの丸干しが旨い。一%くらいは、この店が物件購入の要因になったかもしれません。

息子が小さい間は、自然豊かな環境に住むのもいいだろうと引っ越しを決めたのですが、彼は生まれ持った魂がインドアな奴で、海では全然遊びませんでした。とはいえ「九十九里ハーブガーデン」は、子供向けの遊具施設が付いていて、ここに来れば息子が30分は遊んでくれる。当時、家族でよく利用しました。そしてもう一つの目的はケーキとハーブティー。……ま、僕に似合わないでしょ?(笑)嫌いじゃないんですよ。

現在は川崎に住んでいて、個展に向けた準備と小説の執筆という二段構えで制作活動をしています。朝七時頃、家事を手伝うためにバタバタと起き出して、午前中はそのまま原稿を執筆。午後は作品に絵の具を塗るなど、機械的な作業を行うのが日々のパターンです。

息抜きがあるとすれば酒。毎日飲みます。一人飲みも多いですね。

といっても、上品な店は苦手なんです。齢50にもなって、これだけ酒が好きだったら、行きつけの小料理屋で軽く挨拶して……そんなシブい中年になってしかるべき。我ながら情けないとは思いますが、僕の場合はいつも店の入り口で写真付きのメニューを見て「ビール大瓶が460円なら、まぁ、いいか」みたいな感じです。

ほろ酔いで作品のアイデアが浮かぶようなことはよくあります。そういう意味では、酒を飲むのもクリエーティブな時間。頭はいつも作品のことを考えていますし、それが苦痛ではありません。24時間、なんなら寝てるときでも、僕は美術に関する夢を見てもいいくらいですけどね。

デビューして大体25年になります。日本の現代美術業界は、才能もやる気もあるのに、なかなか時代の追い風が吹かない作家がごまんと眠る世界。僕のように、自分がやりたかったことと、業界の潮流がたまたま合致していて、わりとラクにデビューして活動を続けてこられたのは、実にラッキーなことだと思っています。

このまま死ぬまで酒とタバコを続けながら、何らかの制作を続けられたらいいんですけどね。でも、それもあと15年もあれば御の字です。とはいえ、その年になったら、きっと「まだ死にたくない」とかいうんでしょうけどね。