経営者の身になにかあれば、それはすぐに「経営問題」に発展する。世界一の自動車会社のトップは、そのリスクを承知で、過酷なレースに出続けている。その目的は、「現場」から会社を変えること。孤立無援の状況で、「創業家」の運命を背負った男の覚悟を、ドイツで聞いた──。

「ガズー」の始まりは、今から約20年前にさかのぼる。当時、40歳の豊田は、業務改善支援室のリーダーだった。そのなかで、全国の販売店の改革として手掛けたひとつが、「ガズードットコム」という名のウェブサイトの立ち上げであった。

慶應義塾大学を卒業後、アメリカでMBAを取得した豊田が、米国の投資銀行を経てトヨタに入社したのは1984年。生産管理や営業部門を渡り歩いた後、彼は90年からの2年間、生産調査部でトヨタ生産方式(TPS)を現場で学んでいる。