目指すべき“二度目のオリンピック”

若新雄純(わかしん・ゆうじゅん)
人材・組織コンサルタント/慶應義塾大学特任講師
福井県若狭町生まれ。慶應義塾大学大学院修士課程(政策・メディア)修了。専門は産業・組織心理学とコミュニケーション論。全員がニートで取締役の「NEET株式会社」や女子高生が自治体改革を担う「鯖江市役所JK課」、週休4日で月収15万円の「ゆるい就職」など、新しい働き方や組織づくりを模索・提案する実験的プロジェクトを多数企画・実施し、さまざまな企業の人材・組織開発コンサルティングなども行う。
若新ワールド
http://wakashin.com/

“二度目の東京五輪”に向けては、前回の成功体験を知るシニア層だけで有識者会議が開かれ、すべてに莫大な予算が組まれています。もちろん、世界トップ都市としての威信をみせたいというのはわかりますが、若者たちの多くは、そのいつまでも規模の大きさばかりを追い求めるやり方やムードに対して、熱くなれないのでしょう。

もちろん、オリンピックそのものには素晴らしい価値があると思います。そして、東京がオリンピックをするべきではない、と言いたいわけでもありません。せっかく、既に世界トップの都市になった東京が“二度目のオリンピック”を開催できることになったのだから、これまでの他都市のオリンピックとはまったく違うタイプの“マニアックなオリンピック”を目指せたらいいのになぁ、と思うのです。

世界に勝つことばかりを意識して過剰に立派な競技場をつくるのではなく、すでにある施設を再利用した循環のシステムつくったり、応援を快適にするためにホスピタリティをとことん徹底したり、ネット環境を駆使して「最小の規模」で開催できる仕組みを実験してみるとか……。これまでとは“質の違うもの”こそが、今の日本が挑戦すべきことのはずです。

アニメや漫画、ゲームなどに代表される日本発のコンテンツは、ハリウッド映画のダイナミックさには敵わなくても、もはやそれとは比べるべきものですらなく、繊細な描写・表現や独特の世界観など、まさに“新感覚のもの”として世界に評価されてきました。

まぁ、僕がここで何を言ったところで、今さら変わるわけではありませんが、二度目の東京五輪は、そんな規模への対抗意識や執着を手放して、「こんなのもアリなのか?」と最初は違和感すら与えるかもしれない、未知で独特の新体験を提供する方向で勝負すれば、若者たちも巻き込んだまさに国民一体の祭典を実現できるはずです。