進歩する都知事かを見極める
選挙公約を見ると荒唐無稽と感じるものがあるかもしれません。ですので、候補者が選挙期間中にどう変わったのか、注意深くみることをお勧めします。実現不可能なことを言っていても、「それは不可能だ」という声が候補者本人に届くはずです。それを受けて修正したり、全く触れなくなったり……、人により異なります。最後まで同じことを言い続ける人は勉強していないし、「それは無理」という声が届いていないことになります。
特に今回の都知事選挙は急だったので、要望のようなことしか言っていない候補者もいるかもしれない。選挙期間中に寄せられた意見を取り入れようとするならば、それは進歩といえます。情報を取り入れる能力、度量があるかも重要な資質なので、選挙が始まった時点では要望、希望、目標のようなことしか言っていなくても、だんだん正確になり、精度が高まっているかどうか――ここが一つの物差しになります。大切なのは、都知事になった後に都民の声を聞いて取り組む人かどうか、政策を進化させていく気持ちがあるかどうかです。
ちなみに、3期以上長く続いた知事は、選挙戦中から具体的な政策を語っています。美濃部氏(美濃部亮吉氏、1967年~1979年、3期在任)は福祉、鈴木氏はバラマキ福祉批判と財政再建、石原氏はディーゼル規制についてでした。
ですので、有権者は都知事の素養を見抜くことが必要です。1100万人の有権者がいる選挙なので、立候補者と直接対話することは難しい。メディアを通じて候補者の表情を見て理解することになります。
そう考えると、選挙期間が17日間というのは少ない。有権者数が60万人、70万人の県と1100万人の都とで、選挙期間が同じというのはおかしい。アメリカの大統領選は1年にわたって展開されます。1年は難しくても、2カ月ぐらいあれば、やる気がない候補者は自然淘汰されていきます。また、現在、立候補に必要な供託金は300万円ですが、これは少なすぎます。このぐらいの金額なら、本人にお金がなくてもスポンサーがつくなどして立候補できてしまうので、お金での制限はできません。ですが、選挙期間が2カ月ぐらいあれば、政治資金を調べることもできます。