国とは異なる、都の利益を代表する都知事

東京都と国の関係は、ある程度の緊張関係にあります。“1票の格差”があるため、国政選挙における都民の1票の価値は、地方の人の2分の1から3分の1です。国政は多くが地方の代表者で成り立っているため、必然的に、国は地方の利益を代表することになります。一方、都知事は都民の利益を代表することになり、これは国の利益とはかなり違ってくるはずです。外交など国の専権事項は別ですが、福祉や街づくりについては国が決めたことは地方の水準や基準であって、都民とはギャップがあるのが普通です。これが都知事と政府との緊張関係につながるわけです。

明治大学大学院教授 青山やすし氏

保育を例にとると、石原都政時代に認証保育所という制度を作りました。国が定める認可保育所では一定の広さの園庭が求められますが、東京の場合はこの条件を満たす保育所はなかなか作れません。そこで、都独自の制度としてマンションでも補助金を出す認定保育所を設けました。生活面では、東京都は国の基準とはかなり違うということです。

さて、都は職員数の削減や行政改革など、血を流して借金財政が出ないようにしてきました。しかし、財政赤字を抱える国は「東京都は不交付団体だから」と、税制改革により都が徴収する法人事業税など約1兆3000億円を国税として徴収しました。本来、法人事業税は地方税であり、国にはちゃんと国税である法人税があるのですが、猪瀬氏、舛添氏と都政が混乱しているときに隙を狙われたんですね。

このように、なぜ都知事がいるのかというと、国政の基準と違うことについて都独自の考え方を主張してもらうためです。都民の利益を代弁する政策を出している都知事でないと長続きしませんし、都民の不利益にも通じます。