残りの30年をどう生きるか

東レ経営研究所特別顧問 佐々木常夫氏

20代前半で社会に出た人が平均寿命まで生きるとすると、50代はちょうど折り返し点だ。いったん立ち止まってこれまでの人生の棚卸しをし、残りの30年をどう生きるか目標を定め、その準備を始める大事な時期だといってもいいだろう。ところが、実際は仕事に追われ、夢中で走り続ける人がほとんどだ。定年になってから仕事に代わるものを見つけようとしても、もう遅い。

たしかに現役ビジネスパーソンが、最大の関心事は仕事だといいたくなる気持ちはわからなくもない。しかし、人生には仕事以外にも大事なことがたくさんあるのだ。ただ、それが何かをきちんと理解するのは容易ではない。だから棚卸しが必要なのだ。これまで歩んできた道を振り返り、自分は何を成し遂げてきたのか、どんな人たちと出会ってきたのかなどを整理してみる。あるいは身近な人に、自分はどう映っているかを尋ねてみるのもいいだろう。これをやることで、自分にとって大切なものは何かが見えてくる。そうなったら、すぐに準備にとりかかろう。

たとえば、定年後は奥さんや家族と充実した時間を過ごしたいと思うなら、今日からそれまで仕事に注いできたエネルギーと時間の半分を家庭に振り分けるのだ。疎かにしていた家事を積極的に引き受け、奥さんや子どもとのコミュニケーションの時間を増やすのである。