人工知能は一歩間違えれば「原発」と同じ

もうひとつの懸念は、AIが人間の仕事を奪う可能性が高いことです。最初は自動運転などの分野から起こるでしょうが、理論的にはほとんどの仕事でAIがとって代わることができます。

とくに単純労働などがAIやそれを組み込んだロボットにとって代わられれば、所得の2極化がますます進むと考えられます。AIやロボットの供給はほぼ無制限に起こるでしょうから、2極化のみならず、これまでの生活様式が大きく変わらざるを得ないことも間違いないでしょう。便利になる反面、仕事や日常生活などが大きく変わるのです。

AIやロボットの進化はこれからもますます進むことは間違いありません。それを人間の幸せのためにどう使えるのか。原子力と同じ問題をはらんでいると私は考えています。

前述したように自動運転車に搭載されたAIや医療診断や手術システムのAIが誤作動する可能性や、金融商品の運用を行うAIが暴走し金融システムに大混乱が起こる可能性もあります。AIは、ときに制御不能となるリスクが潜在的にある原子力発電の存在に似ています。

戦闘ロボットや警備ロボットのAIが暴走あるいは何者かに乗っ取られ善良な市民を攻撃するなどのことも起こりえるでしょう。さらに、企業内では「AI上司」に管理されることや、人の仕事が奪われることも想像できます。そうなると、もはやAIは「便利な道具」ではなく、コントロール不能な「人類の敵」「ヒューマン会社員の敵」となるのです。

AIの暴走をどう食い止めるか。これも重要な課題で、AIをどう人の幸せのために使えるのかを真剣に考えるときが来ているのではないでしょうか。

経営コンサルタント 小宮一慶(こみや・かずよし)
1957年生まれ。京都大学法学部卒業後、東京銀行入行。86年米ダートマス大学経営大学院でMBA取得。帰国後、経営戦略業務などに携わったのち、岡本アソシエイツ取締役就任。96年小宮コンサルタンツ設立。企業経営の助言の他、講演や執筆も。最新著は『松下幸之助 パワーワード ―強いリーダーをつくる114の金言』(主婦の友社)、『小宮一慶の1分で読む!「日経新聞」最大活用術 2015年版』(日本経済新聞出版社)、『No1コンサルタントが教える 20代の後悔しない働き方』(青春出版社)、『一流に変わる仕事力』(中経出版)など。
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