絶不調な新築マンション市場に対し、活況を呈しているのが中古市場だ。中古マンションを専門に買い取り、再販するような業者も増加。価格こそ下落しているが、08年の取引件数は前年比プラスを維持し続けている。

中古人気の理由はなんといっても価格の安さだ。新築マンションの価格を100とすると、中古の平均は約60。新築で4000万円かかるところ、中古だと2400万円で買える計算だ。

もっとも中古住宅の価格下落率がこれほどまでに大きいのは、世界でも日本だけ。築10年で価格が急落し、その後25~35年で限りなく建物価格がゼロに近づくような国は、ほかに類を見ない。逆に言えば、価格の下落率に比べ、実際の価値が高い中古物件も多い。その事実に気づいた消費者が、徐々に新築市場から中古市場へシフトしてきているのだ。

私自身、不動産市場への施策として、中古住宅の流通促進をかねてから主張してきたが、09年は中古市場が見直される転換の年となりそうだ。実際、築年数や立地だけでひとくくりにされてきた中古市場で、個別の物件の優劣により価格にバラツキが見られるようになってきている。今後、中古人気の高まりを受け、建物の耐用年数や管理組合の運用状況など、物件の絶対価値を見極め、売買する傾向はますます強まっていくだろう。

ただし現状は、消費者の間で物件の価値をはかるものさしが共有化される段階には至っていない。よって中古マンションの購入には、欠陥住宅をつかまされないよう、リスクヘッジする必要がある。

私がお勧めしたいのは、建物調査のプロである「ホームインスペクター」の利用だ。日本では、まだ耳慣れない言葉かもしれないが、欧米では住宅購入時にホームインスペクション(建物調査)を依頼するのは常識。日本でも、NPO法人「日本ホームインスペクターズ協会」に現在120名程度のプロが登録している。1回にかかる費用は約4万~5万円。健康診断にかかる感覚で、住宅の「かかりつけ医」としてホームインスペクターの利用を検討してはいかがだろうか。

これまで新築のみに固執してきた購入希望者は、中古市場にも目を向けてみてほしい。価格や値引率だけでなく、求める住まいのあり方を第一に、損得勘定に惑わされないよう吟味してほしい。