上司を助け、自分も成功するためには

<目的と期待について話し合うことから始めよう>

 「私のクライアントの40%は、彼らの上司が何を望んでいるのかよく理解していない」と、心理学者であり、エグゼクティブコーチも務めるレリー・ネイドラーは言う。「上司との関係がうまくいっていないと漠然と考えてはいるが、その理由を明確に説明できない人が多い。私は彼らに、上司に求められている最も重要な役割5つを挙げてもらうことにしている。上司と部下が最優先させるべき仕事が何かを理解し、合意することが必要だからだ」。

部下に期待する内容について、部下が希望するほど細かく説明する上司はまずいない。ギャバロとコッターは、買収されたばかりの会社でマーケティングを担当した副社長の例を挙げている。「彼が、マーケティングと売り上げ改善は社長の目標のひとつにすぎないことをようやく理解したときは、時すでに遅し、であった」。

社長が求めていたのは、目先の収益改善だったのだ。親会社で買収支持の急先鋒だった社長にしてみれば、彼の判断が正しかったことを証明するのが最優先事項だった。だが、副社長は「社長が最優先と考える仕事と目的に相反する行動を取ってしまった」。

ここでの教訓は、情報を鵜呑みにするなということだ。確かな情報をつかんでいない分野について、あれこれ推測してはいけない。上司が掲げる目標に変化がないか、定期的に確認するべきだ。関心事も優先事項も変化していくものだからだ。加えて、企業の目標のみに目を向けてはいけない。時には上司のエゴを満足させる努力が信頼を勝ち得、より大きな仕事を任せてもらうきっかけになることもある。

<何げない行為に着目しよう>

あるCFOは、社長と話し合うときにいつもオフィスのドアを閉めていたので、社長は苛立ち、ネイドラーがこのCFOの指導にあたることになった。社長のモットーは、「開かれた会社」であり、ドアを閉め切って話すのは、彼にとっては許し難いことだった。このCFOは極めて有能な人物だったが、ドアを閉める習慣をやめることができなかったため、解任された。

この場合、ドアが開いているか閉まっているかは、単に好き嫌いの問題ではなく、いつでも社員と話す用意があることを示す社長のジェスチャーだったのだ。この点を見落としたために、このCFOは、意図せずに、社長が重視する価値を受け入れていないというメッセージを送っていたのだ。

上司が好む会議の進め方や物事を伝える方法などを観察すれば、上司と接する方法がわかってくると、ギャバロとコッターは指摘している。当然ながら、部下が上司の流儀に合わせれば点を稼ぐことができる。だが、上司の機嫌を取ることだけが目的ならば失敗する。部下は物事を正確に読み取る能力を期待されているから、そのような部下はいずれ上司の信頼を失うだろう。