多額有利子負債で借金するからくり
国内では06年4月、情報通信網を手に入れるためのボーダフォン日本法人買収に代表される携帯電話事業への参入。その後、ウィルコムやイー・アクセスなど積極的な買収を繰り返し、バンド(周波数帯)や中継機などの通信施設を安値で買い、低コストで通信ネットワークを整備してきた。そして、それを生かして収益を拡大していった。
国外では13年7月に米携帯電話事業第3位のスプリントを約1兆8000億円で買収。これに続きTモバイルを買収して第2位のAT&T、第1位のベライゾンに肉薄し、米国における地位を確固たるものにするはずだったが、結局は買収を断念。現在、スプリントはまだ収益が挙がらず、お荷物のように見られている。しかし同社は子会社にクリアワイヤというネットワークを所有するブロードバンドサービス事業者の子会社を持つなど、これから売却できるお宝を数多く持っている。孫氏はおそらく2~3年後には黒字化できるアメリカ市場のてこ入れ策を頭に描いているのではないだろうか。
ところでソフトバンクは有利子負債が約11兆円もある中で、買収を続けることがなぜ可能なのか。例えば、今までの日本の企業では不動産を保有することで信用力を補ったが、不動産は査定の手間がかかる。しかも、いつでも売却できるものでもない。ところが有価証券であれば、市場の価格でいつでも処分が可能だ。仮に、アリババの株をソフトバンクが時価総額で9兆円分を保有していると計算されれば、それに相当する資金を借り入れられることになる。そういうからくりのもとに、ソフトバンクは投資を繰り返すことで手に入れた資産によって、次のローンを引っ張ってくることができるのだ。それが11兆円もの有利子負債を抱え、格付けがダブルBであっても巨額の個人社債を発行できるほどの人気企業である背景だと言えるだろう。
ソフトバンクでは1カ月に数十件もの投資案件が俎上に載り、それを何度も練ってチェックすると言われている。なかでも孫氏が魅力を感じ、投資先として選ぶ市場のポイントは、世界でも人口が多く、これからも増加が見込まれ経済発展を遂げる地域であろう。それはアメリカであり、中国、インド、インドネシアといったアジア各国だ。