マナー違反をして受け入れられる

たとえば、現場で塗装や電気工事などの作業を行う建築業の人たちは、「先輩・後輩」という縦の人間関係を非常に重んじます。そのため、「大きな声で挨拶をする」「お酒の席で先輩を立てる」「きちんとお辞儀をする」などのことに関しては気を使いますが、「無礼者ランキング」1位にもなっている「身なりがだらしない」、9位の「正しい敬語が使えない」、10位の「タバコのニオイが残っている」などに当てはまる人は、残念ながら数多く存在します。

アンケートを見ていくと、これらの行為に対して、「会食の場に汚れた作業着で来た揚げ句、手ぶらで名刺の1枚も持っていなかった」(メーカー・匿名希望)、「丁寧語、尊敬語、謙譲語の使い分けができない若い営業マンと話をしていると、違和感で気持ち悪くなってしまう」(アイマックスコンサルティング・辻博)、「本人は気づいていないのでしょうが、全身からタバコ臭がして、さっきまで吸っていたことが丸わかり。口臭もきつく、それだけで営業トークを聞く気がしなくなった」(商社・匿名希望)などの回答が集まっているので、不快に感じる人がいるのはたしかです。

しかし、私の経験上、こういった業界で杓子定規なマナーを実践すると、彼らからは距離を置かれて、コミュニケーションがとりにくくなってしまいます。それよりは、多少マナー違反でもフランクな対応をしたほうが、好意的に受け入れてもらえるケースが多いもの。マナーレベルが自分たちと同じ=「同じ物差しを持っている」ということが、一緒に仕事をするうえでの信頼につながるのです。