塚越さんと同じように、あらかじめお客さまへのお土産を活用して、「突然で申し訳ございませんが、ぜひお渡ししたいモノがあったので寄らせていただきました」とアポなし訪問をすることがあるのが、大手不動産会社でトップセールスを続けている三住友郎さんだ。

「人間関係ができていない段階でアポなし訪問をするのであれば、素っ気なく対応されても当たり前だと思って、肩の力を抜いておくことが大切です。そして、お客さまに物件を売り込もうとするのではなく、『あなたに得をさせたいのです』ということをわかってもらえるように心がけます。お土産はノベルティでもいいのですが、不動産関連の税制改正のポイントや、近くで計画されている地下工事の内容などお客さまのお役に立つ情報なら、喜んで耳を貸していただけます」

三住さんの営業のモットーは「1に熱意、2に誠意、3に知識」であるそうだ。どんなに知識が豊富で誠意があっても、熱意に勝ることはない。お客さまに得をさせたいという熱意があれば、「こんな情報があったので、またお訪ねさせていただきました」と、笑顔で何度でも訪問することができるようになるのだという。

一方、相手の欲求を満たすトークを用いて、生命保険、コンピュータ、そして幼児英語教材の営業現場で数多くのアポなし訪問を成功させて断トツの実績をあげてきたのが、プレゼン話し方研究所社長の吉野真由美さんである。

「アポなし訪問で嫌われないようにするうえで最も大切なのは、相手の方の欲求を満たすことです。その欲求とは何かというと、『認められたい』『尊敬されたい』ということ。つまり、自分を立ててほしいということなのです。だから、アポなしで行って『何でこんな忙しいときに来て』と嫌な顔をされたら、『わぁー、普段お忙しい○○さんに出てきていただいて嬉しいです』といってしまいます。そうすると苦笑いをして、もう『帰れ』とはいえなくなります」

そして、吉野さんが相手を立てるうえでの「キラー・フレーズ」として勧めているのが「光栄です」という一言だ。『広辞苑』を引くと、光栄には「はえあること」「ほまれ」「名誉」という意味があることがわかる。まさしく最上級の目上の人に対して使う言葉であり、そういわれて嫌な気持ちになる人はまずいないだろう。

「大手の電化製品会社からOEM(相手先ブランドによる供給)の契約を取ろうとしていた中堅クラスの電機メーカーの社長が、相手先の社長をアポなしで訪ねて『お忙しい最中にお会いできて光栄です』といったところ、1時間以上も話ができて、それがきっかけで契約締結になりました」

たった1つの言葉も疎かにできない最たる例であろう。

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