1人の時間を大切にしたいという蛭子能収さん。人との「つながり」がストレスを軽減し、人生を豊かにするという予防医学の石川善樹さん。お2人に、人付き合いの極意を聞いてみた。

◎相談◎
隣のおばさんが、なにかとお節介で困る。近所付き合いは難しくて、ああ、面倒くさい。

▼蛭子さんの回答 
好きなことをするために生きているのです

イクメンとかパパ友とか、ご遠慮願いたいです。簡単に「じいちゃん、お願い」と孫の面倒を見させられるんだけれど、怪我しないように気を使うし、こっちは孫と遊ぶより自分の好きなことをしたいんですよ。年寄りがみんな、赤ちゃんを好きだと思ったら大間違い。休みの日だから「競艇場行って遊ぶぞー」と張り切っていたのに。

好きなことしなかったら、生きている意味なんてないじゃないですか。

親戚付き合いもないし、葬式にも行かないし、近所付き合いも面倒ですね。仕方ないこともあるけど。

1人で、誰とも話さなくても苦じゃないんです。相談できる友達は必要っていうけれど、大事なことは黙って自分で決めるもの。相談されたほうだって絶対迷惑ですよ。

▼石川さんの解説
コミュニティのチャンネル数を増やそう

いくつものチャンネルを持っていれば、あるコミュニティで同調圧力が深刻化しても、別のコミュニティがあるので追い込まれずに済みます。

同調圧力とも関係するのですが、連帯感とともに大切な健康の要因が、自律性を持っているか。要は自分で裁量を持って、仕事なり人生なりを過ごせているかどうか。この「裁量と連帯感」というのが、20世紀最後の最後に発見された、健康に影響を及ぼす2大要因なのです。

コミュニティは大きく変わりました。昔は、田舎は場所を軸にした地縁が強く、都会だと組織、会社を軸にしたつながりが存在感を持っていました。

ところが、バブル崩壊後は終身雇用制が崩れ、ひとつの組織に身を預けるのはむしろリスク。では、場所でもない、会社でもない、誰と共同体をつくるのか。そこでどういう社会を営むのかという問題は、日本に限らず世界中で大きな問題になっているのです。今や世界の人口の半分が都市に住んでいるわけですから。

とりあえず、複数のコミュニティに重心を分散させるというのが、一番確かな「つながり」のつくり方といえそうです。

実は脳全体に占める大脳皮質の割合で、「つながり」を持てるスケールみたいなものがわかっています。テナガザルだと15頭、ゴリラが35頭、チンパンジーが65頭くらいで、人間は150人くらいだろうと。

で、本当に親しい人の数は6人くらい。昔から、文化が違っても、テクノロジーが発達しても、変わらないのです。

その6人を、どういう6人で構成すればいいか、ということもわかってきて、6人がすべて1つの同じコミュニティだとまずくて、高校の同級生、大学のサークル、趣味仲間など、3つとか4つの違ったグループに分かれているほうがいいのです。

日本人は「つながり」が単一のコミュニティに依存しがちです。つながりの質も大事ですが、まずはそれ以上に量を増やすのを追求したほうがいいでしょう。

この点、女性はつながるのが得意です。おしゃべりが延々とできるのは、つながることを目的として、つながれるからです。お土産やプレゼントのやりとりの面倒さも厭わない。

ところが男性は、「つながり」は手段になっても、目的にはなりにくい。利益を求めて「つながり」に参加すると、ストレスの発散の場でなく、溜めこむ場になってしまいます。

【「つながり」疑問派】蛭子能収(えびす・よしかず)
漫画家。タレント。1947年、長崎県生まれ。長崎商業高校卒業後、看板店、ちり紙交換などの職業を経て、漫画家に。現在は、ユニークな風貌と独特の発言で、バラエティ番組などでも活躍。近年の絆ブーム、つながり礼賛の風潮に疑問を呈した『ひとりぼっちを笑うな』が話題になる。
 
【「つながり」肯定派】石川善樹(いしかわ・よしき)
予防医学研究者・医学博士。1981年、広島県生まれ。東京大学医学部を卒業後、米国ハーバード大学公衆衛生大学院修了。昨年秋に出版した、人との「つながり」と寿命についての研究をまとめた『友だちの数で寿命はきまる』が話題になる。近著に『最後のダイエット』。
(遠藤 成=構成 ノーチラス工房=写真)
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