巨額の外貨準備が各国の内需を低迷させる

以前の寄稿(4月14日付)で各国の税制に関して直接口出しをすればそれは過剰な内政干渉にあたるとしたが、米財務省もご多分に漏れず、増税による日本経済の深刻な打撃については言及していても、増税見送りすべしといった踏み込んだ表現は避けている。たとえ本音が日本の内需拡大に直結する減税であっても、だ。というのも、各国の国内需要の弱さは米国の経済成長の足手まといとなってきた、との文脈の中で上記の指摘がなされているからだ。

15年後半から16年3月末まではドル高・新興国通貨安が進んだ時期でもある。各国はそれに対応すべく、ドル売り・新興国通貨買い介入を実施したわけだが、ドル売りをする際には各国はそれぞれが保有するドルの外貨準備を取り崩し、そのドルを売った相対で自国通貨買いをすることになる。結果、各国の外準は著しく減少する。

今回の新基準の1つに設けられた為替介入の項目に関わることであるが、巨額の外貨準備の存在は各国の需要低迷の要因の1つと米財務省は考えている向きがある(この点については、今年3月に国際金融経済分析会合に招致されたスティグリッツ教授の「需要を縮小させる外貨準備の積み立ての必要性を減らす」べきとする資料なども参考になろう)。

本来、国内で循環すべき資金が外貨準備として自国外に滞留すれば(ドルの外貨準備なら米国債あるいはFRBの当座預金となる)、その分内需が低迷する。世界総需要のマイナス要因は所得格差と外貨準備高需要であることは「国連報告」でも指摘されており、外貨準備高を生きたお金として活用できるような資金循環をつくりだす必要性が問われている。

国際収支不均衡の結果としての外準の存在があり、外準の存在自体が問題というよりSDRのような活用方法が求められている現在、GDP比28.7%と突出した外貨準備をすでに保有する日本が、漫然とドル買い為替介入を実施しさらに外貨を増やす⇒スリー・ストライクとなる行動はそもそも取りにくい。ちなみに、対GDP比における外貨準備の比率は中国30.8%、ユーロ圏2.1%、英国3.5%、カナダ4.5%となっている。

現状が果たして円高水準と言い切れるのか、目先のドル円レートの動きに惑わされることなく日本の実体経済や国際収支の不均衡を鑑みた上での適正なドル円レートについて考える際、今回の米財務省の新基準は1つの示唆ともなろう。

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