ハイエンドスマートフォンの減速、サイクルの長期化
このように2015年は、世界的に「ハイエンドスマートフォンの減速」が見えてきた年だった。サムスン電子は2015年通期で、全世界でのモバイル分野の売り上げを前年比で6%落とし、2016年のモデル「Galaxy S7」での回復に注力している。アップルはiPhoneの全世界販売台数を、2015年中こそ過去最高を維持したものの、2016年1~3月期には、前年比18%マイナスの5119万台に落とした。
ハイエンドスマートフォンが売れなくなれば、こうした機種向けのパーツ事業も影響を受ける。ソニーはカメラモジュール事業について、2015年度に596億円の長期性資産の減損処理を行った。ソニーの吉田憲一郎CFOは「スマートフォン市場は低成長ステージに入った前提で事業を進める必要がある。15年度は拡大予測が強く、我々も読み違えた」とし、慎重な判断が必要、との姿勢を示す。
ハイエンドモデルの販売台数が落ちた理由としては、ミドルクラスのスマートフォンとの顧客の奪い合いのほか、すでに売れたハイエンドスマートフォン自身が長寿命化した、という事情もある。
「スマートフォンを落として壊してしまった」という人も少なくないだろう。以前はそうした時が買い替えのフックになっていたが、現在は修理して使う人が増えてきている。いや、修理コストが高い日本の場合、ガラス割れなら「修理せずに使う」人も少なくない。特に、まだ収入の少ない若年層で目立つ。
海外では、ショッピングモールの一角に修理業者がいるのが当たり前であり、その場でスマートフォンを分解して修理する光景がよく見られる。スマートフォンの生産拠点である中国・深センには、中古スマートフォンや工場から別ルートで出荷された部品から修理用部品を取り、不正規流通させる業者も多い。
日本の場合、携帯電話の修理は認定事業者のみが担当できる、という法規制があるために海外ほどの勢いはないものの、それでも、修理業者が増えていることに変わりはない。ソフトバンクは、5月9日より、ソフトバンク表参道とソフトバンクグランドフロント大阪にて、iPhoneの店頭引き取り修理を始めた。バッテリーの故障など、本体交換となる一部の修理については即日引き渡しとなる。これは、携帯電話事業者が修理対応を拡大することが顧客つなぎとめの効果を持つほどに“修理ビジネス”の価値が上がった、ということであり、この傾向は続くことだろう。