数学の世界では、正しいということを証明するのは非常に難しい。1つでも反例や矛盾があってはならないからだ。逆にいうと、何か1つでも矛盾が証明できたら、間違いだと結論づけられる。それが背理法である。ポイントは相手の主張を論理的に否定するために、いったん相手の主張を肯定することだ。

このテクニックは、意思決定をする管理職などには必要な武器になる。人は何気なく感覚で発言していることが多い。ビジネスの会議でも、その場の雰囲気で意見を述べたりしがちだ。そんな中で、論理的なアプローチをすれば、あなたの発言力には説得力が生まれるし、相手の意見に反論するときも、感情に訴えるのではなく、論理的に述べると、相手の納得感も違ってくる。

ただし注意したいのは、声高に正論を述べないこと。研修会などでもアドバイスするのだが、論理的には正しいけれども、論破して相手を打ち負かしてしまうと、人間関係がギクシャクしかねない。人には感情があるので、あまり理詰めで攻めると、反発を招きやすい。論理的には正しいのだけど、感じの悪い人になっては損だ。

そこで私はよくアドバイスするのだが、「仮にあなたのいっていることが正しいとして、そもそもの前提に少し矛盾しませんか。私は矛盾すると思うのですが、どう思われますか」などと話す。つまり、最後は相手に投げかけるのだ。そうするとニュアンスが柔らかくなるし、そうかもしれないと相手も思うので、お互いにダメージが少なくなる。

論理が「凶器」にならないように、少しだけ配慮をしたいものである。

(構成=田之上 信)
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