説明上手な人はどこが違うのか。ビジネス数学教育家の深沢真太郎さんは「モデルをうまく活用できているかどうかがカギだ。この方法を使えば、主張自体の正しさは関係なく相手を納得させる可能性が高まる」という――。

※本稿は、深沢真太郎『「数学的」話し方トレーニング』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。

オフィスで議論するアジアのビジネスパーソン
写真=iStock.com/kazuma seki
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「モデルを使って話す」説明がうまい人の共通点

説明がうまい人はモデルを使って話しています。いったいどういうことか、さっそく説明を始めましょう。

まずはモデルという言葉を理解します。

あなたがこの表現を聞いてすぐに思い浮かべるのは、ファッションモデルといった類の言葉で表現されるものではないでしょうか。ファッションモデルの仕事とは、服にはどんな特徴があるのか、うまくコーディネートするための法則は何か、などを着用することで表現することです。すなわちモデルとはあるものの特徴や法則をわかるように伝える役割があると考えられます。

実は数学の分野では「数理モデル(あるいは数学モデル)」という言葉があります。専門家によって定義は様々ですが、一般的なものとしては「性質を明らかにしたいものについて、その定量的なふるまいを定式化し、計算によってその性質を模擬できるようにしたもの(※)」となります。難しい言葉が並んでおり、この説明だけではピンとこない方も多いかもしれません。後ほど少しだけ補足いたしますので、恐縮ですがここはいったんこのまま読み進めてみてください。

あらためて、先ほどの「数理モデル(あるいは数学モデル)」の定義を確認します。その文章において数理(数学)という概念を除いて表現してみると、モデルとは性質を明らかにしたいものについて、そのふるまいを言語化し性質を説明できるようにしたものと理解することができないでしょうか。そしてこれは先ほどのファッションモデルの話とほぼ同じことを表現していることに気づいていただけるでしょう。

「○○は××という性質がある」

そこで、ここではこのモデルという言葉を、これ以上シンプルに表現することは無理だと言えるギリギリまで情報を削ぎ落として定義することにします。

モデルとは、「~はこういう性質(法則)がある」と言語化されたもの。

準備が整いました。ではここからが本題です。

冒頭で私は、説明がうまい人はモデルを使って話していると主張しました。それはすなわち、「~はこういう性質(法則)がある」と言語化されたものを使って話しているということに他なりません。

例えば企業の採用活動において、「偏差値の高い大学の学生の方が即戦力になりやすい」という法則があったとします。誤解がないように補足をしておきますが、これはあくまで説明のための仮の設定であり、私はこれが真実であると思っているわけではありません。

もし多くの人がこの法則を正しいと評価しているとするならば、企業の採用担当者がこの法則を使って「だから偏差値の高い大学の学生を優先的に面接していくべきだ」という考えを持ったり、誰かにそう説明することは自然でしょう。そしてその説明にはある種の説得力が生まれます。なぜなら、多くの人が正しいと評価する法則に当てはめて説明しているからです。

主張したいことがある
→多くの人が正しいと評価する法則に当てはめる
→説得力ある内容として伝わる

極めてシンプルですが、これがモデルを使って話すという行為です。感覚を掴んでいただくために簡単な演習問題を用意しました。ぜひチャレンジしてみてください。

【演習問題】
あなたの知人の中で「仕事がデキる(デキそう)」と思う人物をひとり挙げてください。何かしらの法則に当てはめて、なぜその人物は仕事がデキる人なのかを説明してください。