※本稿は、深沢真太郎『「数学的」話し方トレーニング』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。
「同じ構造の別物」で話す
私たちはコミュニケーションにおいてなかなかうまく伝わらないことがあったとき、たとえ話を使ってそれを理解させることがあります。いくつか例を挙げましょう。
テレワークが浸透しない企業
→オンライン授業が浸透しない学校のようなもの
ビジネスにおいて市場や競合などを分析せず闇雲に施策を乱発すること
→暗闇でボクシングをするようなもの
「いつかやろう」は必ずあとから自分の首を絞めること
→夏休みの宿題をギリギリでやる小学生のようなもの
例えば最初の「テレワークが浸透しない企業」を題材にします。
もしあなたが子どもや学生に対して、なかなかテレワークが企業に浸透しないということを伝えたいとします。しかし相手は子どもや学生であり、ビジネスパーソンではありません。それをそのまま伝えても、言葉としては理解できても、「なるほど」と深く納得することは難しいのではないでしょうか。
しかし「学校にオンライン授業が浸透しないのと同じように、企業もなかなかテレワークが浸透しないんだよ」と説明すれば、おそらくイメージが湧くはずです。
この事例における「テレワークが浸透しない企業」をAとし、「オンライン授業が浸透しない学校」をBとします。子どもや学生はAを伝えられてもわかりません。しかしBはわかります。ならばBとAは同じこと、あるいは似たもの同士であることを伝えることでAもわかる。これがたとえ話で相手に理解させるメカニズムです。
Aがわからない
→A=B(AとBは同じ構造)
→Bならわかる
→Aもわかる
ピンとくるかどうか
ある物を別物にたとえることのメリットについて、もう少し踏み込んで解説します。
繰り返しですが、私たちはコミュニケーションにおいて、たとえ話を使って相手に理解させることがあります。仮に伝えたいことをA、それと同じ構造をしたたとえ話をBとします。Bが必要な理由は相手がAを理解できないからですが、別の表現をするとこうなります。
「ピンとこないから」
「イメージが湧かないから」という解釈でもいいと思います。Aが伝わらないのはAの内容が間違っているからではなく、相手にとってイメージが湧かない話だからです。ならばBの表現に求められる条件は、相手がピンとくるたとえ話であることとなります。先ほど挙げた「テレワークが浸透しない企業」と「オンライン授業が浸透しない学校」の例もまさにこれに当てはまります。