──はは~ん、つまり、個人から直接反応を獲得し、リレーションシップを構築していく<ダイレクトマーケティング>の手法ってわけだ。

あえて英語で言って、難しくしてません? でもまあ、そんなものかもしれません。自己紹介はどの世界でもつきものでしょうから、ビジネスシーンで使えそうな定番をいくつか準備しておいたほうがいいでしょうね。

──じゃ、自己紹介のお手本見せてくださいよ。

お手本ですか? 私が会社を辞めるときに上司がかけてくれた言葉が「サラリーマンも大変だが、芸の道も大変だ。明日どうなっているか何の保証もない世界だから心していけよ」というものでした。

もっともだなと思っていたら、私が辞表を出して実際辞めるまでの間に、会社が不祥事を起こしまして、ちょっとしたゴタゴタの末に会長と社長が退くことになりましてね、私と同じ日に。結果として3人で引責退任、という形になりました。3人同時に退いて、私だけ志の輔一門の門を叩いたということです。

──あー、うちの会社も不祥事起こして社長が引責辞任しねーかな。自己紹介がやりやすくなるのに。

社長さーん、こんなこと言ってる人がここにいますよー。ま、要するにサラリーマンであれ、経営者であれ、芸人であれ、明日の保証なんてないんだってことです。

──でもみんながみんなドラマチックな自己紹介できるわけじゃないでしょう。

いいんですよ、ドラマチックじゃなくて。自己紹介から爆笑を取ってやろうと意気込むと、スベったときのダメージが大きいので、軽いジャブでいいんです。<立川志の春です。でも生まれは夏です>くらいで。たとえ軽くスベったとしても、あいつ自己紹介したときちょっとスベったな、という印象が残っていると覚えてもらいやすい。