──よく聞いてくれました。こないだ、オヤジ狩りにあったんですよ。ボコボコにされて全治10日。いやー、ひどい目にあいました。
うーん、重すぎますよ。それ聞いて笑ったらひどい人でしょう? そんなこと本当にあったんですか? ウソ? ダメですよ、ウソをついちゃ。誇張ぐらいならいいけど。普段から、おかしかったことはメモするよう心掛けておくといいんじゃないですか。
──志の春さんみたいに、大した話じゃないのに、面白く話す人っているじゃないですか。テクニックを教えてくださいよ。
褒められてるのかけなされてるのか。ま、いいです。コツというか、その場面の絵が浮かぶような話し方ができれば伝わりやすいですよね。
我々落語家がよく使うのは、会話調で話を進めるというテクニックです。落語自体が会話形式ですが、例えば、送別会のスピーチで「○○さんには本当にお世話になりまして、何度もご馳走になりました。お礼を言うといつも〈出世払いだからな〉と言われました」という話し方よりも、「○○さんには本当にお世話になりました。ご馳走になるたんびに『○○さんご馳走様でした!』『ご馳走なんかしてねえよ、出世払いだからな』。『わかりました!』と言いながら心の中で<僕は絶対に出世しないぞ!>と思ってました」。
会話調にすればオチがつけやすくなりますし、「間」で勝負できるんです。これは落語家だけでなく、話の上手な人は本能的にやっています。
──もしも今、志の春さんが物産マンに戻ったとしたら、ビジネスマンとしてのトークの腕は上がってますか?
たぶん、今のほうが面白い話をするというより、相手の話をよく聞くようになっていますね。サラリーマン時代はこちらが伝えたいことを一方的に、自分は、自分は、と話していた気がしますから。
落語家 立川志の春
1976年、大阪府生まれ、千葉県育ち。社会人3年目のある日、餃子を食べにいく途中で、たまたま立川志の輔の落語を聴き、半年間逡巡の末、三井物産を退職。志の輔門下へ。2011年、二つ目昇進。著書に『誰でも笑える英語落語』『自分を壊す勇気』ほか。
1976年、大阪府生まれ、千葉県育ち。社会人3年目のある日、餃子を食べにいく途中で、たまたま立川志の輔の落語を聴き、半年間逡巡の末、三井物産を退職。志の輔門下へ。2011年、二つ目昇進。著書に『誰でも笑える英語落語』『自分を壊す勇気』ほか。
(遠藤 成=構成 奈良岡 忠=撮影)