──米国大統領選が迫っていますが、2強のクリントン氏とトランプ氏のどちらがふさわしいと思いますか。

私は必ず投票には行きますが、これまで大統領選を制した候補に投票したことは一度もなく、それを誇りに思っています。

クリントン元大統領はあちこちで戦争を始め、あらゆるものにお金を使った。妻のヒラリー氏も同じことをするでしょう。

トランプ氏は貿易バトルを始めるつもりで、そうなると企業の倒産と本物の戦争を招く。1929年に起こった世界恐慌をはじめ、歴史を紐解けばそれは明らかです。人々が経済的に困っているときに、白馬にまたがった人物が現れて「私があなたがたを救う。悪いのは外国人だ」と言って扇動するのは世の常です。しかし、保護貿易政策に走ったり移民を制限したりすれば状況は悪化し、戦争につながる。つまり、トランプ氏が大統領になると、米国はより早い時期に崖から転落します。

日本も夏に選挙を控えていますね。皆さんも“抗議する候補者”に投票すべきですよ。そうしなければ、日本の問題はなにひとつ解決しません。

──急落した原油について、OPEC(石油輸出国機構)とロシアが集まって話し合い、産油量を凍結する動きが加速しています。価格は近く底を打って反転するのでしょうか。

原油価格は今、“複雑な動きをする底値”にあると見ています。相場というのは通常、暴落したあとには一時的に反発し、再度下落して、以前のレベルが真の底値だったかどうかを試すものです。なにかを契機に相場が崩れて価格が乱高下し、底値を試す展開になり、真の底を打ったあとは1バレルあたり50ドル以上の価格に落ち着くでしょう。

世界のどの油田も埋蔵量が減少しているし、新たな油田も発見されていません。例外であるシェールオイルも、現在の価格では儲からない。1バレルあたり70ドルくらいまで上昇してもシェールオイルに関する懸念は払拭されないでしょう。奇跡の資源なんかではなかったことに、人々は気づいたのです。米国ではすでに50あまりのシェール企業が倒産したし、石油メジャーは巨額の投資をしたにもかかわらず、ポーランドなど欧州でのシェール資源開発から軒並み撤退した。たとえ豊富なシェール資源を見つけても適切な地質でなければ使い物にならないのです。原油価格はいずれ大幅に上昇すると思いますが、投資マネーがシェール企業に殺到することはないでしょう。1バレルあたり100ドルまで上がっても、一度やけどを負った投資家は警戒心を持っているはずです。