上場の達成感を味わって「またゼロからイチを作ってみたい」

【田原】フォトクリエイトで重松さんはイキイキと働いていらっしゃったんですよね。なのに、どうして独立したのですか。

【重松】2013年にマザーズに上場したことが契機になりました。上場は、仕組みを1つ完成させて、その仕組みが社会の評価を受けた証しです。そこで達成感があったので、またゼロからイチをつくり出したいと考えました。

【田原】それで思ついたのがスペースマーケットの事業だったのですか。

【重松】そうですね。でも、すぐにシェアリング・エコノミーにたどりついたわけではありません。最初に100個ほどアイデアを出して、妻とああでもない、こうでもないとやっているうちにいまの事業のアイデアが出てきた感じです。

【田原】えっ、奥さんと?

【重松】妻はサイバーエージェントが新卒を採りはじめたときの1期生で、同社のベンチャーキャピタル部門にいました。いまは別の会社にジョインして、ベンチャーキャピタリストとして働いています。家にプロの投資家がいるので、壁打ちを繰り返してビジネスプランを磨いていきました。

【田原】ちなみにボツになったアイデアにはどんなものがあったのですか。

【重松】当時考えたのは、産後院ビジネス。日本では女性が出産した後、わりとすぐに退院しなくてはいけませんが、韓国には産後2週間ほどケアしてくれる産後院という施設があって、人気を博しています。これは日本でもイケそうですよね。あと、個人の旅行ガイドと観光客をマッチングするサービスとか。これはいま実際にやっている会社があると思います。

【田原】どれも面白いと思うけど、どうしてスペースレンタルになったのですか。

【重松】シェアリング・エコノミーの大きなトレンドが魅力でした。アメリカのベンチャーをリサーチしていたら、やはりシェアリング・エコノミーをやっている会社が急成長していました。向こうのビジネスは、だいたい2~3年遅れで日本にやってきます。日本にはまだシェアリンク・エコノミーのプレーヤーが少なかったので、やるならいまだろうと。

【田原】シェアリング・エコノミーといっても、シェアするものはいろいろあります。重松さんが空間に注目したのはどうしてですか。

【重松】フォトクリエイトで全国の結婚式場に営業に行くと、平日の昼間は本当にガラガラなんです。すごく豪華な施設なのに誰も使っていないのはもったいない。支配人さんにそう話すと、みなさん「困っている」と言うんです。一方、私も会社の採用説明会でホールを借りる必要があったときに、「専用のホールじゃなくてもいい。どこかの会社のセミナールームを安く借りられないものか」と考えたりしていた。そうしたミスマッチがあることは身をもって分かっていたので、空間にコンセプトを与えて貸し方を工夫すれば、必ず貸し手がつくという自信はありました。

東京・台場のマダム・タッソー東京にて撮影。ここもスペースマーケットで借りられる