中国人エリートは現実的で合理的

――3社とも中国の優良企業で、中国人エリートが集まっている。中国のエリートってどんな人?

【ファーウェイ】現実的で合理的です。

【アリババ】中国国内の国内の名門大学を出て、さらに海外に何年か留学している、海外で働いていたなどのグローバル経験を持っている人が多いですね。

座談会を行ったのは、通信機器メーカー、Huawei(ファーウェイ)こと華為技術日本株式会社。ファーウェイの本社は広東省深センにあり、従業員17万人以上。世界第3位のスマートフォンメーカーとして広く知られる。ファーウェイ・ジャパンの本社は大手町にあり、従業員は現在約820人。
――仕事をする上で、違いに驚いたことは?

【ファーウェイ】日本と違う点として、計画を具体的に詰めないですね。ざっくりと方向性と大きな目標だけを示し「いつまでに」とだけ言われます。「あとはあなたたちで考えて」という指示なので、こちらの自由度が高いです。

【アリババ】役割分担が明確。権限移譲というか。日本の場合、任せたと言いながらも一つ一つ決めるのに全部許可をとらなければならなくて、結局なにも任されていないということがあるじゃないですか。中国企業は逆で、ざっくりとした指示がやってきて“そんなざっくりしたまま落としてくるの?”と、最初は戸惑いました。“これで何をすればいいの?”と。基本的に細かい指示はない。任せてくれているのかもしれない。取締役もよく「プロフェッショナルになれ」と言っていますね。

【バイドゥ】日本は方向性を決めるのに大きな会議をして、なんとなく全員の合意をとってから進む……というところがありますよね。中国ではトップが決定したものが降りてくるだけで、確認の部分がありません。トップは誰がどの分野を得意なのか分かっているので、的確に指示をしていると思う。少なくとも私にとっては、その指示がやりやすい内容のことが多いです。部長を飛ばして指示がくることもよくある。

具体的な進め方などは担当者に任されるので、その人に得意分野があると(中国企業で)活躍しやすいと思います。逆に、日本の会社は部門異動が多いイメージです。それではその人の得意分野ができないのでは。

――成果主義について。日本の会社を見ていると、ある程度の規模の組織にはほとんど働いていない人がいることが多い。またそういう働かない人が待遇のよい正社員であったりすることが問題になっているが、そういう場合はどうなる?

【バイドゥ】日本支社は30人しかいないので、そういう人は思い当たらない。多分、働かない人は辞めていくのでは……。本社は4万5000人以上いますが、やっぱり仕事ができない人が思い浮かばないです。

【アリババ】社員が若いですね。大学みたいな雰囲気があり、“これをやれといわれたからやっている”というよりは、興味本位でいろんなことをやっている感じがあります。仕事をせずにボーッとオフィスにいるような人はいない。

【ファーウェイ】本社には隠れ窓際族もいるのかもしれないけど、直接会ったことはないですね。昇進のスピードが速く、できる人はどんどん上に上がっていきます。「じゃあ次はこれをやってみろ」と人が育つ土壌を与えてくれる。そういう人が目立つだけかもしれませんが。日本に来ている中国の人は頭の回転が速い人が多い。30代で日本人の部下、中国人の部下がいる。しかも、日本について興味を持っており、勉強しています。勉強熱心です。

――若い人が年上の部下を持つこともある?

【全員】多いですね。

【アリババ】日本人でも中国人でもそれはあります。若い中国の人が年上の日本人を部下に持ったり……あまり年齢の感覚がないですね。基本的に姓ではなく、フレンドリーに名前やニックネームで呼び合っています。

――中国は、女性の進出が進んでいる印象がある。

【アリババ】アリババではマネージャー層の3割ぐらいが女性です。中国では女性が働くことが当たり前。子供を産んでもすぐ戻ってきて働いているのが普通です。

【ファーウェイ】ファーウェイはグローバルで管理職の9%ぐらいが女性で、本社のボードメンバーにも女性が3人います。技術系部門にも、管理系部門にもまんべんなく女性がいます。中国でも絶対数として理数系に女性が少ない(ので技術部門の女性が少なくなってしまう)という点はありますが、男女が同じ土台で働いています。