創造的な人生を送りたいなら、過去を振り返るな
2011年10月にこの世を去ったスティーブ・ジョブズは、創業したアップルを時価総額世界一の企業に育て上げた名経営者である。マーケティングコンサルタントの橋本哲児はそのジョブズの関連書籍などから1300ものコメントを抽出し、生き様や経営手腕の分析を行った。
とくに人生の指針として橋本が最も重要だと考えているのが、「創造的な人生を送りたいと思うなら、あまり過去を振り返るのはよくない。自分がしてきたこと、自分という人間をそのまま受け入れ、それを捨て去らなければならないのだ」(『スティーブ・ジョブズI』)である。
ジョブズは恵まれた生い立ちではなかった。生後間もなく労働者階級の家庭に養子に出された。無名の大学に入ったが、1年も経たずに中退。禅の修行に打ち込んだこともある。
「ジョブズは自分の因縁から解放されたかった。過去の延長線上で生きる限り、未来は開けない。過去を乗り越え、未来を志向したからこそ飛躍でき、高い目標にたどり着けた」(橋本)
ジョブズが亡くなる前にグーグルの共同創業者であるラリー・ペイジに贈った重要な言葉に「フォーカス(集中)」があって、「本当にやるべきことを絞り込んで、それに全力投球すれば、難しい目標でも達成できることを教えた」と橋本は解説する。
さらに、ジョブズは目標達成を容易にする秘訣として、「(みんなは)僕らには僕らが得意なことをしてほしいと望んでいる」「素晴らしい仕事をする唯一の道は、それを好きになること」と口にしていたそうだ。
人はつい目先の利に目が向きがちだが、ジョブズが「(情熱の)原動力は製品であって、利益じゃない」と断言し、「人類全体に何かをお返ししたい。人類全体の流れに何かを加えたい」としていたことに橋本は着目する。
なぜなら、そうすることでiPodやiPadのユーザーが世界中に広まり、人々のライフスタイルを変えることができたからだ。
(敬称略)