総合商社は事業構造の変革を迫られる
総合商社は資源頼みだったこれまでのビジネスモデルや事業構造の変革を余儀なくされる。資源事業の先行きに不確実性が色濃いだけになおさらだ。とりわけ、この4月1日付で小林健社長が会長に就き、垣内威彦常務執行役員が社長に昇格した三菱商事、昨年4月に「32人抜き」で安永竜夫社長が就任した三井物産の両社は、「世代交代」のタイミングに有史以来の赤字に見舞われるだけに、経営革新に向けた真価が問われる。
三菱商事の場合、今回の人事で代表権が外れた小林会長が「今の資源価格が当面続くのを前提に、すべて処理した」と語ったように、巨額減損損失の計上で資源デフレの膿を出し切れるかが鍵を握る。同時に、新社長の垣内氏は生活産業グループを統括してきた、食糧や食品畑の出身であり、非資源事業により軸足を据えた事業構造転換への手腕が試される。
その一方で、総合商社が軒並み資源デフレに沈むなかで、資源事業への過度なシフトを避け、衣料、食品など非資源部門に注力してきた伊藤忠の鼻息は荒い。それもそのはずで、同社は現時点で16年3月期の最終利益を従来予想の3300億円を据え置き、このまま推移すれば総合商社で初の首位に躍り出る見通しだからだ。
伊藤忠にしても資源デフレに無傷だったとはいえない。しかし、非資源事業が好調なほか、資本提携した中国最大の国有複合企業CITICグループの利益が寄与し、北海の原油開発での減損損失などを補い、利益を押し上げる。同社を率いる岡藤正広社長は、同社にとっては任期6年の“慣例”を破り、社長続投を宣言したほどであり、冬の時代を迎える同業他社を尻目に、総合商社で利益トップという躍進に導いた自信をにじませる。その先には、赤字に陥る三菱商事、三井物産を前に、独り勝ちに高笑いする岡藤氏の姿が浮かび上がる。