本物を選ぶお客が最後に選ぶブランド

「もちろんノンプレミアムでもビジネスは成立します。実際、トヨタは高価格帯の商品が苦手でも利益を出せていますし、スバル(富士重工業)さんはプレミアムをやっていないのに世界トップクラスの利益率です。しかし、それは為替レートが円安になっているから調子がいいだけであって、今後為替が円高に振れればあっという間に苦しくなる。コストの高い先進国の企業としては、付加価値の高い分野にシフトしていかないと、とてもサスティナブルとは言えない」

『レクサス トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(井元康一郎著・プレジデント社刊)

トヨタOBのひとりはこう語る。

昨今、シャープ、東芝など日本の白物家電事業が次々に海外企業に買収されている。なぜ日本の家電は敗北したのかということについてさまざまな分析が出されているが、これはある意味当たり前のことだ。日本の家電は豊かなアイデアと品質で世界を席巻したと言われるが、それが成立していたのは何より日本が新興国だったからだ。ベースコストが高い先進国となった後で「以前はそのやり方で成功していたのだから」と、良品廉価のビジネスモデルを続けていても、後発ライバルの実力は上がり、その一方で新機能の開拓余地は減っていく。新しいものを生み出せなければジリ貧になるのは自然法則のようなものなのだ。

自動車は幸い、巨大な装置産業ゆえに参入障壁が高いため、家電のようにはならないですんでいる。豊田社長は白物家電的なクルマづくりだけをやっていては将来、付加価値低下は避けられないとみている。それが「もっといいクルマをつくろうよ」という言葉の真意であり、レクサスをブランドづくりの尖兵という存在に位置づけているのだ。

2012年、北米向け高級車レクサスESのラインオフ(生産開始)式で、豊田社長は「レクサスを、本物を知るお客様が最後に選ぶものにしたい」と語った。これは世界の名品と目される高級車と対等以上の存在を目指すという宣言だ。ブランド創立50周年に向け、レクサスはこの困難な目標に向けたチャレンジを開始している。

(文中敬称略)