「激震が走りましたね。それなりに商売がうまくいき、いくつかの店を持って、いろいろなことを考えてやってきたつもりだった。だけど、この光景は何だと。もともと焼き鳥屋でも、オープンキッチンでの実演性は重視していました。でも、製麺所のほうがすごかった。お客様の目の前で麺を打ち、ゆがく。うどんができたその瞬間の何とも言えない風情。お客さんはそれらすべてを求めてここに来ているんだと感じた。そのとき『繁盛の極意はこれや』と確信しました」
00年にオープンさせた1号店から、丸亀製麺のコンセプトは変わらない。店の扉を開ければ、まず目に飛び込んでくるのが製麺機。その横には大きな羽釜があって、麺をゆでている。そんな讃岐の製麺所の風情を、店舗で再現することを目指した。店舗名を「◯◯うどん」とせず、讃岐の製麺所を意識させる「丸亀製麺」としたのも、こだわりの表れだ。
「製麺所を再現しようと思えば、効率化なんて言ってられません。場所は取るし、水も出しっぱなしですから、水道光熱費は恐らく一般的な飲食店の倍ほどでしょう。だけど、そこにお客様の潜在的な需要があったんです」
粟田社長の見込みどおり、製麺機は集客装置として機能した。業績は順調に伸び、ロードサイドへの出店を続けていると、ショッピングモール内のフードコートに出店する機会を得た。これが次の飛躍のきっかけになった。
フードコートは1店舗当たりの面積が狭い。調理は簡単なものに限り、しかもクローズキッチンで行う。客に見えるのはレジカウンターとメニューボードのみ。効率を考えれば、どの店も同じような配置になる。
「商品引換所みたいなものですよね。しかし私たちは、前面に製麺機を設置しました。無理やり押し込んだと言ってもいい。よそはキッチンを見せることをリスクだと考えていますが、うちは全部見せることでお客様に喜んでいただく店ですから」