正しいと思うことを正しく議論できるか
一方、外国人がつくる「クレド」や「ビジョン」は、極めてプラクティカル(実用的)にできている。このため判断に迷ったときやトラブルが発生したときの拠り所になる。J&Jの社内ではよく「Back to Our Credo(クレドに戻ろう)」といった。社内に混乱が生じたときにはクレドに立ち返って議論をやり直すのだ。
ただし、こうしたクレドはすぐにつくり出せるものではない。企業の長年の歴史から滲み出てくるものだ。カルビーでも「グループビジョン」を定めているが、これはJ&Jのクレドに倣ったもので、まだオリジナルの内容とはいえない。これからさらに時間をかけて磨き上げたいと考えている。
私はJ&Jからカルビーに移ってきて、さまざまな改革を行ったが、それらがうまくいったとすれば、それは「グループビジョン」に沿ったものだったからだと思う。たとえば、そんな改革のひとつに「鮮度管理」がある。
カルビーの主力商品であるスナック菓子は、「揚げたて」が一番おいしく、時間が経過するほど風味が落ちる。このため営業マンは、店頭に陳列された商品の鮮度を、手作業でチェックしていた。しかしポテトチップスが発売された約40年前と違い、現在では売り切れるまでに「揚げたて」の風味を十分に維持できる。それにもかかわらず、店頭での鮮度管理が続けられ、利益率を押し下げていた。
このため、私は店頭での鮮度管理をやめさせ、商品の回転率を上げるように指示した。たくさん売れば、商品は入れ替わり、店頭鮮度は維持されるからだ。現場からすれば、長年の取り組みを否定されたように思うかもしれない。だが、お客様からすれば、新鮮でおいしい商品が購入できるのであれば、鮮度管理の方法は問われないだろう。
正しいと思うことを正しく議論することが、企業経営にとって何よりも重要だ。そのときクレドのように「何が正しいのか」を記したものがあれば、混乱を避けることができる。