【黒田】編集者なんかはそんなに四角四面のマナーが必要な仕事じゃないから、実践する機会がなくて忘れちゃうっていうのもあるんでしょう。まぁ、仕事をするうえで本当に必要ないならそれでいいんですよ。私は大企業の研修が多いんですが、逆に彼らに教えることが何もなくて困ってます。人事担当者も丁寧だし、新入社員もみんなそれなりにできる子ばっかりだし。きっと、就活の段階で面接対策なんかをきちんとやってるから、ひと通りのマナーは入社前に身についてるんでしょうね。熱心に聞いてくれるのが申し訳なくなっちゃう。
【新井】熱心さということなら、地域差がある気がします。私はいろんな場所で研修をしているんですけど、大阪と広島はすごく熱心で、「もっと教えてください!」って女子社員の方たちからお食事に誘われたり。逆に、京都は「教えてもらうことなんかないわ」みたいな慇懃無礼な態度で、嫌な感じでした。
【高橋】わかる! 東京とか神奈川とか、同じ都会でも関東はそこまで極端じゃないですよね。
【黒田】そんなことあるの? 県民性なのかな(笑)。今度からチェックしてみよう。
マナー研修は本当に必要か?
【高橋】ところで、そもそもビジネスマンにマナー研修が必要なのかっていう、大きな疑問にぶちあたることありませんか?
【東出】あります。さっきのマスコミ関係の話も、結局はそういうことですよね。私たちが研修で教えるような「マナー」がなくてもやっていける仕事なら、わざわざ研修を受けさせる必要はないんじゃないかと思うことがあります。それを言ったら、自分の仕事がなくなっちゃいますけど。
【黒田】私の知る限り、マナー講師の教科書的なものって、20年以上ほとんど変わってないんですよ。パソコンが普及して、スマホになって、時代はこんなに変わってるのに、そういう実態に全然追いついてないってことですよね。「お辞儀は45度」なんて教えても、自分だって普段はそんなに深く頭を下げてないし、企業によってはフランクな電話応対のほうがいいケースもあるし。ケースバイケースで「適切なマナー」なんて変わるのに、そういう現実は教えられないジレンマをずっと抱えています。