CO2削減と火力発電急増の矛盾
化石燃料は調達コストという大きな問題を抱えている。エネルギー関連シンクタンクの幹部は「大震災直後の11年から14年の間、原油価格が高かったとき、アジアプレミアムといわれ、日本が支払っているLNG価格も連動して上昇。価格は約300kWhのコストで16~17ドルもしていた。いまは原油安という局面になり、LNGの輸入価格も連動して下がった。平均価格でいうと、いま8ドル程度に落ち着いている」と話す。
石油にはIEA(国際エネルギー機関)があって、先進国が備蓄で互いに助け合うことができる。LNGにはそれがない。また、日本には「石油備蓄法」があり、200日分ぐらい国内に備蓄している。だが、LNGは10日~20日分しかないといわれる。そうなると、輸出国で紛争や輸送経路が絶たれたときは、価格が上昇するだけでなく、LNGそのものが手に入らないという事態も起こる可能性がある。
石炭はどうか。現時点でいえば、石炭が一番安い。とはいえ、石炭も価格変動はある。最近の動向でも、中国のGDPが急伸していた頃は、その爆食ぶりを反映して急騰していたが、ピークは石油よりもいち早く終わって、いまは安定している。今後も、火力の主力燃料としてLNGと石炭は重要な位置を占めるだろう。
さらに17年には、電力に続いて「ガス自由化」も実施される。これによって、電力、ガスとも地域独占がなくなり、さらなるコスト競争がスタートすることになる。そこで行われるのが、業際を超えた企業同士での業務提携である。中国電力とJFEホールディングス、東京ガスが共同で首都圏に大型火力発電所の建設をすると発表している。このように自由化後に火力発電が急増することが予想される。
新しい火力発電所の建設も、復興が急がれる東北地方で展開されている。東北電力が昨年12月、新仙台3号系列(宮城県仙台市宮城野区)の営業運転を開始した。関西電力と丸紅は、出力130万キロワットの発電所を秋田市で、石油資源開発(東京都千代田区)と三井物産は120万キロワットのものを福島県新地町で稼働させる計画もある。
こうした動きに関連して無視できないのが、地球温暖化対策だ。この問題をめぐって政府は、30年までに13年に比べて温室効果ガス(CO2)の排出を26%削減するという目標を国連に提出している。その一環として、火力発電所は燃焼の効率化・構成変化によるCO2削減を図るという。同時に、電源構成では再生可能エネルギーと原子力を、それぞれ20%前半まで増やし、電力コストの2~5%程度低減をめざしている。電力とガスの自由化のなかで、この目標への対応も急がなければならない。