電力「ベストミックス」は夢のまた夢!?
4月から「電力自由化」がスタートする。これをビジネスチャンスととらえた“新電力(PPS)”と呼ばれる企業が、電力の小売りに新規参入する。ビジネス関連の調査会社によると「東京ガスなどのガス会社だけでなく、JXHDなど石油元売りや丸紅などの総合商社に加え、ソフトバンクグループなどが名乗りを上げている。おそらく、地域を超えた販売合戦が繰り広げられるのは必至の状況だ」という。
その場合、PPS各社は東京電力などの送電設備を利用する。発電コストは1円でも安いエネルギーが必要だ。そうなると、コストのなかで燃料費以外の運転維持費が少なくてすむ火力が有力となる。しかも、火力は既存の発電所の効率的な活用という手法も導入できる。一方、太陽光(メガソーラー・住宅)あるいは風力は、設備の設置に多額の資金が必要になってしまう。
政府の長期エネルギー需給見通し小委員会において、2030年時点での「望ましい電源構成(ベストミックス)」が決定されたが、原子力の比率を「20~22%」、再生可能エネルギーは「22~24%」、火力が「56%」という方針を掲げた。近い将来の“エネルギーミックス”、つまり発電方法をバランスよく組み合わせていこうというわけだ。
だが、いま日本の電力は火力発電を主体に賄われている。2011年の東日本大震災に伴う国内の原発全面停止後は、基本的に電力供給は火力発電に頼ってきた。その燃料は海外から輸入する化石燃料にほかならない。天然ガス(LPG)、石炭、石油である。それらがいかに多く使われているかは、14年度の電源構成の化石燃料依存度が示していて、なんと88%にも達するのだ。
問題は、その発電コストである。石油は高く、LNGと石炭は比較的安い。キロワット時(kWh)のコストで比較すると、石油が30.6~43.4円なのに対し、LNG13.7円、石炭12.3円。ただし、石油が火力部門で使われている量は前述の電源構成で15%。残りをLNGと石炭で分け合ってきた。東日本大震災以降、まずLNG、その次に石炭。そして、最後の砦として石油も燃やした。昨年来、原発の一部が再稼働したとはいうものの、この流れはしばらく変わらないだろう。