本当の意味で日本人に品格が求められている

こうした恩地氏の物事の捉え方は、ダイエーの中枢にいて、その没落の軌跡を体験したことと無関係ではないはずだ。中内氏の秘書役を引いた後は、経営企画の分野に異動。92年のリクルートやハワイ・アラモアナショッピングセンター買収などの大型M&A案件、ローソンの上海進出などの事業開発を手がける。その一方で、ヤオハンの買収では、中内氏に対してGMS(綜合スーパー)の時代の終焉を主張したが、ダイエーは落城への道をひた走った。

つまり、成長から成熟、衰退のプロセスを熟知しているわけだ。恩地氏は「これからの日本は、経済活動にしても、政治にしても、欲深さや不正直ではなく、本当の意味で品格が求められるのではないか」という。そして、その好例をイギリスに求める。80年代のサッチャー政権下の金融ビッグバンによって、アメリカなどが地元の金融機関を買収し、シティを席巻する結果を招いた。しかし、現実を受け止め、誇りと文化は守った。

いま恩地氏は、M&A助言会社としては日本の草分け的な会社に身を置き、ダイエー時代の経験を生かして活躍している。本人は「M&Aの動向から日本経済の行く末を占うという観点も身についた」という。それにしても、昨今の経済・社会変動は目まぐるしい。そんななか、恩地氏の筆は、私たちの思索にいろいろなヒントを与えてくれる。