目的設定

資料作成の出発点は「目的」を設定することです。目的といっても目先のやるべきことではなく、最終的に実現したいことを明らかにする必要があります。3段階で説明しましょう。

まず、「最終的に相手にどんな行動をとってもらいたいのか」というゴールをどこに置くかを考えます<図の(1)>。例えば、私が研修資料をつくるなら、「受講者に実践できるテクニックを持ち帰ってもらう」ということがゴールになります。

ゴールは一言で明快にまとめてください。目安は1行です。細部に入り込みすぎると曖昧になってしまいます。

次は、先ほど設定したゴールのために「何を理解してもらいたいのか」を明らかにしましょう<図の(2)>。ここで注意してほしいのは、図の(2)(1)に関連している必要があるということ。「どんな行動をとってもらいたいのか」を飛び越え、ひたすら理解してもらいたいことだけを綿々と書いた資料が少なくありません。

最後に「相手がアクションを起こすためにはどのような心理状態にするべきか」を決めます<図の(3)>。資料を読み終わった後や説明し終わった後、相手にどんな状況になってもらいたいか。ゴールを「承認を取り付ける」と設定しても、資料説明後の相手の心理状態が「前向きにその気になっている」のか、あるいは「乗り気ではないが、しぶしぶ承知」なのかでは、その後のアクションに大きな違いが出てきます。

私自身は、相手の心理状態を「(講演や研修の受講者に)帰宅してから家族にこの話をしてもらいたい」と設定することがあります。家族に話すということは、私の講義の概要が頭に入っていて、しかも家族にもわかる言葉で説明できるところまで自分の中に浸透しているということです。受講者のそのような状態を頭にイメージしてみる。すると、覚えやすい表現や、具体的なたとえ話など、資料に載せるべき情報が自然と見えてくるのです。