陣容刷新でなでしこ再浮上なるか

澤さんはかつて、なでしこらしさとは「最後まであきらめずに戦う姿勢」と言ったことがある。みな、あきらめずに一生懸命には戦った。ただ、一体感が希薄だった。澤さんはNHKテレビの中国戦の解説で「意思統一ができていない」とつぶやいた。

こういった選手の意思統一やコミュニケーションはプレッシャー下の実戦経験とハードワーク、し烈なチーム内のポジション争いから作られていく。体力、技術だけでなく、心身のコンディションからも影響を受ける。

なでしこは第4戦のベトナム戦の前、中国が韓国を下した時点でアジア予選敗退が決まった。ベトナム戦(6-1)後、佐々木監督はインタビューでこう、言った。

「初戦(豪州)で勝利することができなくて波に乗れず、2戦目(韓国)もしっかり勝ち取れなかった。なかなか自分たちの風が吹いてこなくて、難しい予選になりました。勝てなかったのは、僕のせいです」

まずは、なぜリオ五輪出場を逃したのかの徹底検証が大事である。その上で、どんな新しいなでしこができあがるのか。どうやって、這い上がっていくのか。

これで佐々木監督は退任することになった。宮間主将ほか、何人かのベテランも代表引退を決断するだろう。3年後のW杯、4年後の東京五輪に向け、どんな新たなチームが編成されるのか。大事なリオ五輪キップを逃し、なでしこジャパンは大きな転換期を迎えたことになる。

松瀬 学(まつせ・まなぶ)●ノンフィクションライター。1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、同大卒業後、共同通信社に入社。運動部記者として、プロ野球、大相撲、オリンピックなどの取材を担当。96年から4年間はニューヨーク勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。日本文藝家協会会員。著書に『汚れた金メダル』(文藝春秋)、『なぜ東京五輪招致は成功したのか?』(扶桑社新書)、『一流コーチのコトバ』(プレジデント社)、『新・スクラム』(東邦出版)など多数。2015年4月より、早稲田大学大学院修士課程に在学中。
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