サラリーマンは全員が「自営業者」になるべき

【弘兼】柳井さんは以前から「サラリーマン根性」を痛烈に批判されていますよね。こうした考えを持つようになったのはなぜですか。

【柳井】零細企業を経営してきたからだと思います。大企業には、僕がさっき言った「安心、安定、安全」みたいに、自分のことだけを考える人が多かった。そういう人たちとの商談が嫌だったので、サラリーマン根性を批判するようになったんですね。

大企業にもサラリーマン根性を持っていない人もいるんですよ。そういう「いい人」は、相手のことを考えて、お互いにとってベストな形を提案してくれる。経営者感覚やビジネスセンスを持った人ですね。

【弘兼】経営者の立場からすれば、相手が自社の利益と自分の幸せのどちらを優先して考えているか、というのはすぐにわかってしまいますよね。

【柳井】ええ。大企業であっても、零細企業のつもりで、少なくとも自分の周辺、自分の上下を見渡して、会社がどっちの方向に進もうとしているのかを知っておく必要があるはずです。そうじゃないと、たぶん仕事はできないと思いますよ。

【弘兼】自分のことだけを考えるサラリーマンには、自分の生活を守るためには、会社が業績をあげていかなくてはいけないことを理解してもらいたいですね。経営者のつもりで会社の業績を考えていれば、結果として自分の生活も守られる。

【柳井】うちの社員には「サラリーマンというのはもうない。本当はみんな自営業者なんだ」と言っています。

自営業者としても食える人でなければ、組織の中でもやっていけない。たとえば経理をやっている人は、経理という仕事の自営業者だと思ってほしい。そのうえで組織の中の経理は、数字を通じて会社全体の動きを知ることができる。だから経理をやっている人は、経理の仕事を考えながら、会社全体のことも考えてもらわないといけない。そうでなければ仕事は完結しないと思います。

【弘兼】何かの仕事を与えられたときに、いったい何の役に立っているのかわからないけど、とにかく与えられたことだけやっている。そういう姿勢ではダメなんですね。

【柳井】自分から進んで、仕事の幅を広げていく必要があると思います。たとえば漫画でも、絵が上手いだけでは漫画家にはなれませんよね。背景取材やストーリーづくりも重要でしょうし、出版社の要望や読者のニーズにも応えなければいけない。仕事の基本は共通すると思います。

弘兼 「社長は何をしているのか」と仕事のイメージが湧かない人もいるようですが、実際には最も忙しく、いろいろと考えているのが社長ですよね。

【柳井】考えないと、会社というのはすぐ潰れますから。