【柳井】団塊の世代には、趣味の世界だけに入り込まないようにお願いしたい。僕は同窓会に行ったことがないんですよ。それでも、ときどき同級生に会いますが、あまりに爺さんなので嫌になります(苦笑)。
【弘兼】ボランティアでもいいので、自分の役割を認めてもらえるような仕事をしたほうがいいんでしょうね。
【柳井】そうじゃないと、たぶん僕らもそうですけど、仕事を辞めるとボケるんじゃないかと思いますね。
【弘兼】若い世代はどうでしょうか。海外への留学者数は2004年をピークに減り続けています。少子化の影響もありますから、単純に「内向き志向」とは結論づけられませんが、インドや中国、韓国に比べると、確実に後れを取っています。
【柳井】僕はやはりバブルが崩壊してからの時代が、非常に悪い時代だったと思うんですよ。経済が停滞して、いろいろな面で日本が他の国に追いつかれそうになったり、追いつかれたり。日本自体が低迷し、自分たちの給料も上がらない。そういう時代だったと思うんですね。
それはもう断ち切らないといけない。チャレンジしないといけないのに、すごく臆病になっていると思うんです。安心、安定、安全。そういうことばかり考えている。そういうものは、漫画家の弘兼先生にとってもないし、ビジネスマンの僕にとってもない。未来に向かって次はこういうことをやろうと考えないと、本当はいまのこの位置すら危ない。
【弘兼】自分の会社が危なくなっていることにすら気づかず、このままやり過ごそうとしているサラリーマンがたくさんいますよね。流行りの「ありのままで」ではダメです。もっと危機感を持ったほうがいい。1人ひとりが経営者と同じような危機感を持たなければいけないはずです。
【柳井】僕もその通りだと思います。これは個人でも、企業でも、国でも同じで、安心感を持った途端に終わりなんです。「これで達成した」と思った途端に終わり。昔のことを振り返るのではなく、つねに将来のことを考えないといけない。だから危機感がないところには未来はない、と思います。