こだわりがあれば心に引っかかる

【田原】こう言っちゃ何ですが、UPQはまだ実績がなくて無名です。どうして量販店が目をつけたんだろう。

【中澤】担当の方は、モノはたくさんあるけど、目新しいものがなくて売り場がつまらなくなっているとおっしゃっていました。稀少価値のあるものを置いてみたいということで、声をかけてくださったようです。

【田原】商品がほぼ完売したということは、販売の機会ロスがあったと考えることもできます。第2シーズンはもっとたくさんつくるんですか。

【中澤】次は2月に出ますが、私の中ではまず売り切ることが目標です。いくら儲かるからこれだけつくろうというようなビジネスライクなやり方はあまり考えていません。

【田原】おもしろい。中澤さんはあまり商売っ気がないね。あなたにとってUPQの仕事はいったい何だろう。

【中澤】ライフワークとか趣味みたいなものですね。ものづくりをしていれば何か問題が発生してつらい思いをすることはあります。そのときに「仕事だから」という割り切りでは、きっと乗り越えられない。つらいことも自分なりに咀嚼して前に進めるのは、やっぱり好きだからなのだと思います。まあ、趣味といっても、私の場合は嗜む趣味ではなく、命をかけてやる趣味かな。

【田原】会社を大きくすることには興味はない?

【中澤】大きくなると、ある人はカメラの一部、ある人はガラスというように分業化されて、自分が何をつくっているのか見えづらくなります。私はそれを“冷たいものづくり”って呼んでいますが、そうやってできたものはすぐ飽きられて捨てられがちです。それはやっぱり悲しいので。

【田原】逆に、どうすれば捨てられない商品ができると思いますか。

【中澤】つくった人のこだわりが見えるといいなと思います。たとえば機械が壊れるときに、「長い間使ってくれてありがとう」というメッセージが出てきたら、ちょっとホロッとしませんか。実際にユーザーがそのメッセージに気づくかどうかわからないけど、細部につくった人のこだわりがあれば、どこか心に引っかかるんじゃないでしょうか。