セカンドオピニオンを求めるべきか?

一つの病院だけでなく、複数の病院から治療方針についての意見を聞く「セカンドオピニオン」という制度はずいぶん定着してきました。患者さんによっては多くのセカンドオピニオンを求めるために、何枚もの紹介状を持っている場合があります。

しかし、多くの場合、治療内容が病院によって大きく変わることは、ほとんどありません。東京の有名病院でも地方の中堅病院でも治療内容はほとんど同じです。病院や医師を変えたからといって、標準治療の内容が変わることはほとんどないのです。

なぜなら、標準治療とは、がん治療を研究している医師の集まり(学会等)において決められた多くの医師の共通認識だからです。したがって病院を変えることで、まったく異なる治療法が推奨されることはほとんどありません。

ただし病院によって治療の方向性が異なる場合はあります。さきほどの(1)(2)(3)のような、どれもが間違いでない選択肢の場合、医療機関によって推薦順位が変わることはあるのです。

たとえば、お尻の穴に近いところに直腸がんがあったとします。この場合の手術治療としては、お尻の穴も含めて直腸を切除し、今後は永久に人工肛門から排便することになる手術を行うこともあります。一方で、ぎりぎりでもお尻の穴を残し、お尻の穴から便が出る機能をできるだけ温存する手術もあります。

がん細胞をできるだけ完全に除去しようと思えば、肛門まで取るほうが無難です。しかし患者さんからすれば、今までのようにお尻から排泄できることを望む方のほうが圧倒的に多いはずです。

ただ、こういった手術を選択しても、結局はうまく便が出なかったり、長期にわたる下痢でお尻がいつもただれてつらい状態が長く続けば、最終的には「人工肛門にしたほうがよかった」という状況になってしまうこともありえます。どちらにも一長一短があり、どちらが良くてどちらが悪いということはありません。

つまり、この場合はリスクをとっても利便性を追求するか、それとも不便でも安全性を求めるか、という選択になります。このような判断の難しいケースは医師や病院によって方針が異なりますし、患者さんの考え方も人それぞれです。