時代の流れを読む「先見性」と強固な「意志力」

ビル・ゲイツの凄さは、世界富豪No.1を定位置にしているところだ。1995年から2007年までの13年間トップの座をキープした。2008年は前年より20億ドルも増やしたが、“株の神様”ウォーレン・バフェットが40億ドルも多く稼いでトップに躍り出、“メキシコの通信王”カルロス・スリムも11億ドル増やして2位に浮上したため、3位に陥落してしまった。だが、翌2009年には首位を奪還した。前年秋のリーマン・ショックで景気が低迷した影響を受け、前年比180億ドル減の400億ドルに減らしはしたものの、他の富豪がもっと減らしたからだ。

『「世界の大富豪」成功の法則』(城島明彦著・プレジデント社)

しかし、返り咲いた首位の座は、その1年で終った。明くる2010年から2013年までの4年間は、勢いに乗る“メキシコの通信王”カルロス・スリムの後塵を拝することになったのだ。とはいえ、その間のビル・ゲイツの資産額の推移は、530億ドル、560億ドル、610億ドル、670億ドルと4年間ずっと増やし続けた。

長者番付に限らず、スポーツの順位であれ、成績であれ、一度、トップの座から滑り落ちると再び返り咲くのは難しいものだが、ビル・ゲイツは2014年には1位を奪還し、2015年もキープした。そこが、“並みの大富豪”と異なる点だ。つまり、1995年から2015年までの21年間でトップでなかったのは、たった5年だけ。空前絶後の“ビリオネア・オブ・ビリオネアズ”というしかないのだ。

ビル・ゲイツが変えたのは、世界の大富豪史だけではない。ITの歴史も塗り替えた。

ビル・ゲイツが米経済誌「フォーブス」恒例の「世界長者番付」のトップに初めて躍り出たのは、1995年。画期的なOS(オペレーション・システム)として世界的に大ヒットした「ウィンドウズ95」を発売した年である。ビル・ゲイツは、「ウィンドウズ95」の需要を喚起するために、金を惜しみなく使って一気に勝負に出た。販促キャンペーンにローリング・ストーンズを起用、「ロンドン・タイムズ」紙に広告特集を掲載し、それを配布するなどしたのである。

その効果は抜群で、シアトル郊外にあるマイクロソフトで開いた製品発表会には500人を超す記者が詰めかけた。

少年時代、一介の“パソコンおたく”に過ぎなかったビル・ゲイツが、「時代の覇者」となれた秘訣は何か? 手短にいうと、それは、時代の流れを読む並外れた「先見性」と強固な「意志力」である。先見した夢を現実のものにしていく不屈の意志力。その2つの才能で、ビル・ゲイツは世界ナンバーワンの巨富を築き上げたのだ。

※日本円の数字は、発表された時点での為替レートで計算している。
※本記事は書籍『「世界の大富豪」成功の法則』からの抜粋です。

(佐久間奏=イラストレーション)
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