また今年以降2~3年間は、引き続き住宅価格が続落するという意見も多く聞かれる。しかし、それは経済の見通しだけを基にした考え。住宅価格の動向は、賃貸住宅の家賃相場も大きく影響することを忘れてはいけない。

昨年、首都圏のマンション販売数は4万2000戸あまりと例年より半減した。だがその分、賃貸需要は増加している。不動産会社も売れない分譲住宅の代わりに賃貸マンションを建て、高く家賃を設定する傾向が強まっている。

こうした家賃の高止まり現象に分譲価格の引き下げが起こり、過去最大規模の住宅ローン減税の後押しが加わると何が起こるか。私は今春から夏ぐらいにかけて、賃貸から分譲へのシフトが起こってくるのではないかと考えている。

そうなると、これまでいくら値引きをしても買い手がつかなかった新築マンション市況が一転する可能性もある。25年間、住宅業界を見てきた経験から言うと、いつの時代も住宅の需給と価格は上下動をくり返してきた。つまり「住宅が売れないとき」こそが「買いどき」ともいえるのだ。

では、どの程度の価格帯が目安になるか。エリアによっても差はあるが、東京23区内の周辺・郊外地域なら、3LDKを3000万円台で買える物件が出てきている。今年4月からは、そこからさらに1割程度安い“ユニクロ物件”が、2900万円程度で出てくるだろう。

価格動向を模様眺めし、マンション購入を決めかねている人は、そうした分譲価格と現在の家賃および住宅のクオリティを比較検討しながら考えるといい。ただし、購入の決め手となるのは、価格の損得勘定ではない。過度に市況に惑わされることなく、自分や家族にとってよりいい条件の物件を選んでほしい。

(大沢玲子=構成)