戦前も家の中では強かった

では日本はどちらのタイプかというと、実はどちらでもない。日本は英米・フランスとは家族の類型が異なる。このことが両者に様々な違いを生み出している。日本は親・子・孫が3世代一緒に住む直系家族類型に分類される。ドイツ、スウェーデン、韓国もこのタイプだ。

対する英米・フランスは核家族類型だ。こういうと、日本でも核家族化が進行しているのではと疑問に思う人もいるだろう。しかし、この家族の類型は平安時代の終わり頃から1000年近く続き、日本人の性根に染みついている。そのことを端的に示すのが、先輩・後輩という言葉だ。英米・フランスには先輩・後輩にあたる言葉は存在しない。日本人はあらゆる場所で「先輩・自分・後輩」という3世代構造をつくり出すのだ。

そんな直系家族文化の日本において、女性の地位は意外と高いものであった。直系家族における最強の存在、それは姑だ。女は、家父長制度という言葉に反して、家の外に出ることはなかったものの、家の中にあっては権勢を誇っていた。こうなると、そもそも女性とは弱い存在だったのかという疑問が生じてくるだろう。

近現代の日本において、一度だけ女性の社会的地位が急激に向上した時期がある。それは戦争中だ。第二次世界大戦中、男が戦争に行き、働き手がいなくなったために女は家の外へ出かけて働くことになった。立派な労働力として社会に迎え入れられた女性だが、戦争が終わると再び家に連れ戻されてしまう。