実践7:上司自ら「青天井の夢」を描きポジティブになれ!

「上司は、部下に嫌われ、部門の業績が伸びなければ上からも評価されません。四面楚歌に陥ります」(太田氏)

そうした意味では部下より前に、上司自らが幸せであり続けることが、組織活性化には重要といえそうだ。

「ポジティブ心理学の考え方は『成功すれば幸せになれる』ではなく『幸せだから成功する』というもの。ハピネスブースター(幸福感増幅活動)が大きな役割を果たします」(成瀬氏)

成瀬氏によれば、ポジティブ心理学の創始者の一人といわれるマーティン・セリグマンは、幸せの要素を「PERMA」(パーマ)という言葉で定義しているという。Pはポジティブ感情、Eはエンゲージメントのことで夢中になれる活動、Rはリレーションのことで人間関係、Mはミーニングとパーパスのことで人生の意義と目的、Aはアチーブメントのことで達成。それらすべてが入っている自分の活動は何だろうかと考えていけば、ハピネスブースターが見つかるというのだ。

「大げさに考える必要はありません。『幸せってなんだっけ?』のCMでおなじみの、ポン酢しょうゆで食べる鍋を考えてみましょう。みんなで鍋を囲むといい気持ちになれる。夢中になって食べたり、おしゃべりしたり。そこには、家族や仲間という人間関係がある。美味しい鍋を食べることで健康な体づくりができるという意義と目的もあり、一生懸命働いた1日の終わりに食べる達成感もある」(成瀬氏)

つまり、ふだんの何気ない生活の中にも、PERMAのすべての要素を見出すことができるというわけだ。

一方、太田氏がモチベーション維持の秘策として提案するのが、上司であれ部下であれ「長期的な青天井の夢や目標を持つ」こと。

「将来、独立して大社長になるなどといった類いのものでOK。それがあると、多少失敗したり面白くないことがあっても、モチベーションが途切れることはありません」(太田氏)

太田肇
神戸大学大学院経営学研究科修了。京都大学経済学博士。現在、同志社大学政策学部教授。個人を尊重する組織論者として知られる。『承認とモチベーション』(同文舘出版)、『表彰制度』(東洋経済新報社)など著書多数。
 
成瀬まゆみ
ポジティブ心理学を応用して日々の幸福感を上げ、より豊かな人生を送ることをテーマに、セミナー、個人セッションを行っている。『ハーバードの人生を変える授業』(大和書房)、『ザ・ミッション』(ダイヤモンド社)などを翻訳。iPhoneアプリ「ハッピーパワー」の開発者。
(熊谷武二、遠藤素子=撮影)
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