読者がマナー教室に入門!「商談編」

体験者:山田さん 入社5年目 若手社員
住宅資材メーカーで営業を担当する。新規顧客と商談をする際に、とりわけ礼儀作法を意識して緊張してしまうという悩みを抱えている。

入社して5年目の山田さん(仮名)。「接客マナーは、新人の頃に先輩の後ろについて見聞きしたものを真似ただけ。もはや、それが正しいのか、間違っているのかわかりません。これから後輩を指導する立場になるだけに、ちょっと心配」と、マナーに関しては自信がない様子だ。さっそく、今までのスタイルが正しいか否かを上月マリア先生がチェックした。

まず、客先のドアをトントンとノックしたところで、早くも先生から指摘が。

「ノック2回はトイレを連想させてしまいます。親しい相手のもとを訪れる際には3回でよく、ビジネスシーンでは4回ノックするのが正式なマナーです」

予想外の指摘に「たしかにトイレと同じ感覚では、商談にかける熱意や丁寧さが欠けていると思われそうですね」と納得した様子だ。

さらに、手馴れているはずの名刺交換で、またも先生からダメ出し。

「名刺交換の際、1度もお相手の目を見ませんでしたね。海外でこれをしては信頼をなくしかねません」とかなりの低評価。

日本の「まず名刺を見る」スタイルに対し、海外では「まず相手を見る」ことが重要だそう。

「海外のエグゼクティブたちは事前に相手の社名と名前を覚え、名刺交換をしないのが一般的です。ほほ笑みながら相手の目を見、名前を名乗り、握手するのが通常の流れ。名刺交換をする場合は、握手の後になるくらいです」

また、席につくなり名刺をテーブルの上に並べるのも海外では見られない光景だそう。

「全体を通して気になったのがどのシーンも日本的に言う“諸起(もろお)こし”になっている点です。

諸起こしとは、“ながら動作”のこと。箸と器を同時に持ち上げたり、茶碗を受け取るときに両手を同時に出す行為は、相手を敬い『ひとつひとつの動作に心を込めよ』という日本の作法に反しているのです。日本人が作法として取り入れた、“1回1動作”は古今東西共通の立ち居振る舞いなのですよ」

先生からのアドバイス通りに直してみると、それまでせわしなかった一連の動作が堂々とした振る舞いになり、余裕すら感じられるようになった山田さん。

「1回1動作を心がけるだけで、気持ちが落ち着きますね。気持ちの余裕が自信につながり、初めての商談でもうまくいくような気がしてきました」