伝統織物の美しさに魅了されてほしい

そうした中で、世界で活動を続ける日本人の存在を知る。それがこの森本氏であり、アジア各地で医療支援活動をしている吉岡秀人氏(特定非営利活動法人「ジャパンハート」代表)であり、スーダンで医療支援を行う川原尚行氏(特定非営利活動法人「ロシナンテス」理事長)だった。

彼らの活動を目の当たりにし、写真を撮り続けた。それまで日本での確固たる地位をかなぐり捨て、現地の人たちに寄り添いながら一つ一つ積み重ねる彼らの姿に、内藤氏はこれまで追い続けてきたロック・スピリッツを見い出したのかもしれない。

しかし本書は、森本氏のショットが数少ない。表紙は、一本の糸を掴んでいる左手。しかもその手は、手首から指先まで煤けたように黒く、深く皺が刻み込まれているが、この手は森本氏ではない。織り手の一人、現地のおばあさんの手だという。中身は、再生された糸、織られていく工程、現地の子どもたちや働く女性、美しい自然、輝くような織物の数々がふんだんに盛り込まれている。多くの言葉は要らない。押しつけがましいメッセージもない。純粋に伝統織物の美しさに魅了されてほしい。そんな願いが込められているようだ。

時あたかも、クリスマスキャロルが町中に流れる季節。たとえば、彼女へのプレゼントとともにこの写真集を添え、これまでと違った時空の中で思いを馳せてみるのも一興ではないだろうか。

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