なぜ赤字イベントを続けるのか
【田原】川上さんは、ネットサービスは5年で寿命がくるという。でもニコ動はずっと人気がありますね。どうしてですか。
【川上】具体的な理由を言うと、超会議のおかげです。
【田原】超会議は、ニコ動のイベントですね。歌を歌う人もいれば、ダンスを踊る人もいる。僕も政治の討論会で出ました。
【川上】4年前に、うちのエンジニアチームが崩壊したことがありました。マネジメントをきちんとやっていなかったから、人がどんどん辞めてしまったんです。それでニコ動のサービスをつくっていた現場の人たちから、「メンテナンスだけで手一杯。向こう2年は新サービスをつくれない」と悲鳴が上がった。2年間も新サービスを出せなければ、ニコ動は終わってしまう。何か延命させる方法はないかと試しにイベントをやってみたら、これがうまくいった。
【田原】イベントって、どういうものをイメージしていたのですか。
【川上】とにかく最大規模のイベントをしようと思いました。ネットって、過小評価されがちなんですよ。ニコ動には毎日何百万人もの人がアクセスしていますが、ネットだからみんなその実感を持っていない。だからリアルイベントで大勢の人がくれば、ネットというものが本当はすごく巨大な存在なんだということを世の中に示せるんじゃないかと。
【田原】大勢って、超会議の来場者数はどれくらい?
【川上】最初が2012年で、9万2000人。今年は第4回で15万人です。
【田原】すごいね。それだけ集まれば黒字ですか。
【川上】赤字です、ずっと。ただ、ネットのユーザーに応援してもらうためには赤字でいい。黒字にしようと思えばできますが、それ以上にお金を使ってます。
【田原】赤字になるのがわかっているのに、どうしてやるの?
【川上】やっぱりニコ動のブランドイメージが守られますからね。超会議はエンジニアから「2年間、新サービスを出せない」と言われたから始めたのですが、結局その後4年経っても出ていない。今年出せるかどうかも危ういので、ひょっとすると5年出ないかもしれない(笑)。いずれにしてもそれを乗り切れたのは、完全に超会議のおかげですね。
1934年滋賀県生まれ。県立彦根東高校卒。早稲田大学文学部を卒業後、岩波映画製作所、テレビ東京を経てフリーに。幅広いメディアで評論活動を展開。