娯楽に特化した「BeeTV」に対し、報道の機能も持つネットメディアが、ドワンゴが運営する「ニコニコ動画」(以下「ニコ動」)だ。
「ニコ動」は、「ユーチューブ」のような動画共有サービスと、ライブ映像を配信する「生放送」から成る。事業開始から4年を経て、ID登録者は2010万人(2月4日現在)に膨らんだ。ユニークユーザーは1日あたり300万人で、アクティブ率は高い。
人気が出ると運営費が嵩むという悪循環で長らく赤字に苦しんできたが、収益の柱となる有料のプレミアム会員(月額525円)が増え、昨年には通期で黒字化も果たした。現在、プレミアム会員は112万人に達している。
ネットに疎い世代の知らぬ間に、メディアとしても、ビジネスとしても、あなどれない規模になっていた、というわけだ。
先日の東日本大震災の直後には、NHKや民放の報道特番をそのまま生中継し、テレビを視聴できない人たちへの情報提供に一役買った。
「よく助かったな」「泣きそうになる」
奇跡的に救助された人の映像が映し出されると、間髪を入れず、ユーザー発のコメントが画面に流れる。この双方向性が大きな魅力だ。
オタクが集う「動画版・2ちゃんねる」とのイメージが強いが、事業仕分けの生中継をはじめ、政治関連のコンテンツにも力を入れている。
昨年11月には、「政治とカネ」の問題に揺れる民主党の小沢一郎・元代表が1時間半にわたって生出演。のべ23万人が視聴するなど注目を集めた。これを機に「ニコ動」の存在を知ったという人も多いだろう。
小沢氏はテレビや新聞に対し沈黙を貫いていたため、旧来メディアは顔を潰された格好に。
そこに尖閣諸島沖の中国漁船の衝突映像を、海上保安官が「ユーチューブ」に投稿するという“事件”が起こる。
「本来ならマスメディアがスクープすべきこと。それを海上保安官が『ユーチューブ』に流した。小沢さんの『ニコ動』生出演と尖閣ビデオの流出……立て続けに起こった2つの出来事が、大きな転換点になった。ネットがメディアの一角として明確に位置づけられたのです」
ドワンゴ取締役で慶応大学政策・メディア研究科特別招聘教授の夏野剛さんは、そう力説する。