英文をそのまま受け入れる訓練とは
ではどうすればいいのか。英文をそのまま受け入れる訓練を繰り返すことが重要になるそうだ。そのことを池田氏は「英語を掴む感覚が大切」と表現する。そもそも文法とは人間が考え出し、意味づけしたものだが、ネイティブスピーカーが喋ったり、書いたりしている時に文法を意識していることはほとんどない。その頭脳の中にあるネイティブの言語のネットワークの中から自然に出てくるものを表現しているに過ぎない。よく考えると、これは日本人が日本語を話す場合も同じだ。実際に、脳はこのような情報処理をしている。だから、非ネイティブは、ネイティブが喋ったり書いたりした英文を、文法によって意味づけして理解する必要はなく、意味づけすれば逆に英語を使いにくくする。
池田氏はこう強調する。「文法の呪縛から心を解き放たない限り、英語力は向上しない」。ただ、これは文法を完全に無視するということではない。英語を「外国語」として学ぶこと、専門的には、これをEFL(English as a foreign language)というが、このEFLに即したシンプルな文法の考え方があり、池田氏も独自に極めて簡素な文法システムを開発している。日本の英語学習においてはこれまでは、この観点が見過ごされがちだったという。
そして、「英語を掴む」ために池田氏が重視するのが、受信と発信を区別して学習することだ。ここも日本の英語学習では盲点になっている。最近よく、TOEICで800点を取るような人たちでも、仕事のやり取りでは英語が話せないと指摘されている。聞き取れても喋れないのだ。これはリスニング(受信力)とスピーキング(発信力)のギャップを明確に示す例だ。留学や赴任などによってネイティブスピーカーの英語環境の中で揉まれた場合、このギャップはほとんどなくなるそうだが、国内で英会話を勉強する場合には、このギャップが顕著になるケースが多い。
池田氏の教育方法では、受信力(リスニング)向上のためには、しっかりと「ポーズ」を入れた特殊なスロー音声を使うことにより、確実に聞き取れるように工夫している。単にスピードを落として聞くのではなく、英語の音声をしっかり認識する時間を設けるという発想だ。このようにして音声をしっかり掴み取ることができれば、ネイティブが話す速度にも順応していくそうだ。発信力(スピーキング)については、まずは完璧を求めないで、7割できればいい的な発想でリラックスして学習すると効果は上がるそうだ。また、語彙だけで正確に伝わるケースも多いそうで、前述したように脳の中にすでにある日本語ネットワークを活用して、日本語→英語の順番で語彙を覚えることも重要になる。こうすると、覚えた語彙を瞬時に引き出せるようになるからだ。
池田氏は今年2月、語学教育専門の大阪のベンチャー企業と協力し、自身の考えを凝縮させた英会話教材「リッスントーク」を開発した。文字通り、英語が「聞け」て「話せる」ことを表している。